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2010年03月11日13:39

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「北川フラム」 の “ム”。

   




   北川フラム

湯のみ インターネットでは、

   「フラム」 はノルウェー語で 「前進」 の意味だそうです

と100%書いてある。御本人がそう言っているらしい。しかし、そうではない。単に、「前へ」 という副詞にすぎないのだ。

   …………………………

湯のみ 実は、

   「前へ!」 を “前進” と訳す

ということには、ある意味合いがある。すなわち、それは、

   共産主義、ボリシェヴィキ、プロレタリアート運動

とのカラミである。共産主義時代のロシア語で、

   «Вперёд!»  Fpjerjot [ フピェ ' リョート ] 「前へ」

というコトバは、単なる副詞ではなく、ある種のニュアンスを持っていた。それは、「人類は、共産主義へ向かって進むのだ!」 というイデオロギーである。

湯のみ 実際、

   1904年、レーニンがジュネーヴで創刊した
   党機関紙が 『フペリョート』 (前へ)

であった。日本では、通例、『前進』 と訳す。

湯のみ アナトーリイ・ルナチャルスキイが結成した、ボリシェヴィキ左派の名は 「フペリョート」 であった。ソ連邦には 「フペリョート」 という出版所もあった。

湯のみ つまり、「フペリョート」 という単なるロシア語の副詞は、ボリシェヴィキ、共産主義者によって赤く染められたのである。


湯のみ 北川フラム氏の父親、北川省一氏は、良寛研究で知られるけれども、それ以前は、学生時代から、左翼運動、労働・農民運動にかかわっていた。 fram というのは、ロシア語の Вперёд! の訳であろうが、なぜ、ノルウェー語を選んだのか、それは謎である。

   …………………………

湯のみ 御本人をさしおいて、ナンだけれども、

   fram <副詞> 「前へ」 ノルウェー語、アイスランド語、スウェーデン語

である。これは、英語の from と同源。英語の発音と意味が変わってしまったのだ。

   *per- 「前へ」 印欧祖語
    +
   -mo-  最上級語尾
    ↓
   promo- 「前へ」 ゲルマン祖語
    ↓
   fram 古英語、ノルウェー語ほか

という仕組みである。

湯のみ 印欧祖語には、 -mo- とならんで、 -isto- という最上級もあった。ゆえに、 -mo- と -isto- と入れ換えると、

   first ← *furistaz ゲルマン祖語

となる。つまり、 first と from は、そもそも、同じ意味の語であった、とわかる。

   …………………………

湯のみ promo- 「前へ」 は、 *per- 「前へ」+ -mo- “最上級” であった。つまり、「いちばん前の、いちばん前に」 という意味である。ゆえに、

   primus [ プ ' リームス ] 「最初の」 (= first)。ラテン語

となる。英語で prime 「プライム」。この形容詞の副詞形は、まさに、

   primo [ プ ' リーモー ] 「いちばん最初に」

である。

湯のみ 印欧語の序数詞で、たとえば、 three → third、five → fifth などという対応が見えるのに、 one → first と関係がないのは、こういう理由による。

湯のみ この -mo- は、言語によっては -wo- であらわれる。 m と w は人類の言語で普遍的に交替する子音である。口をキチンと閉じないと m は w になる。ゆえに、

   первый pjervyj [ ' ピェールヴイ ] 「最初の」。ロシア語

がある。 v を m に変えれば、「ピェールムイ」 でラテン語ソックリだ。

   …………………………

湯のみ このゲルマン祖語の -mo- は、動詞の語根に付いて名詞をつくる。ラテン語では、 -men, -min などで現れ、ギリシャ語では -μα (-ma) であらわれる。

湯のみ この接尾辞を、アッシらが、日常、どれほど目にしているかを知ったら、意外に驚くかもしれない。

   war-m  英語。本来は、「熱くなる+こと」
     ther-mo- 「サーモ〜」 ギリシャ語由来の造語要素だが
           英語の war- とギリシャ語の ther- は同一。

   ho-me  英語。本来は、「横たわる+こと」

湯のみ 英語で、 -m, -me に終わる単語を調べると、「動詞」+ -mo- であることが多い。

   se-men 「タネ」。ラテン語。「まく+もの」

湯のみ 誰ですか。「精液」 などと言うているのは。ラテン語では 「タネ」 seed の意味です。「まく」 という単語は現代英語にも残っている。 to sow だ。

   …………………………

湯のみ また、ゲルマン祖語の -mo- は、ロシア語では -mja 「ミャ」 となる。ゆえに、

   семя sjemja [ ' シェーミャ ] 「タネ」。ロシア語

となる。また、さらに、

   семья sjem'ja [ シェミ ' ヤー ] 「家族」。ロシア語

が派生する。

湯のみ ロシア語を学んだヒトは、 семя sjemja の変化が奇妙なのにアタマを痛めたかもしれない。

   семя sjemja [ ' シェーミャ ] 「タネは」 (単数)
   семени sjemjeni [ ' シェーミェニ ] 「タネの」 (単数)
   ――――――――――――――――――――
   семена sjemjena [ シェミェ ' ナー ] 「タネは」 (複数)

湯のみ なぜ、こんなことになるか? それは、本来の語幹が、

   semen- だったから

である。驚きだ。ラテン語とまったく同形なのである。ロシア語では、このような単数主格の語尾 -men の -en が鼻音化した。つまり、 [ -mẽ ] である。さらに、スラヴ語では、ポーランド語を除いて鼻音が消失した。ロシア語では、「エん」 は 「ヤ」 に音が変わった。だから、「シェーミャ」 となる。

   …………………………

湯のみ ゲルマン祖語の -mo- は、古典ギリシャ語では、動詞の語根に -μα -ma という語形で付き、名詞をつくった。遠いドッカのハナシではない。

   dra-ma ドラマ
   poe-m ポエム
   dog-ma ドグマ
   enig-ma エニグマ
   paradig-me パラダイム

湯のみ こうした単語の -m, -me, -ma は全てコレである。 -g-ma 「グマ」 という語形が多いのは、語根が -k に終わる動詞に -μα -ma が付くと、 -k が有声化するからだ。

湯のみ これで終わりではない。

   -ism

に終わる単語はすべて、

   -is- ← izō 「〜化する」 ※動詞を派生する接尾辞。英語では -ize, -ise
    +
   -ma
    ↓
   -ism 「〜化すること」

なのである。

   …………………………

湯のみ from の m と -ism の m が同じものとは、オシャカサマでも気がつくめえ。
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