きのうの深夜、「ウソホンティ」 というフジの番組を見ておりました。昔からあるタイプの、いわゆる、
三択で 「ホンモノは誰か」 を当てる
というクイズ番組ですね。
でね、恐ろしいものが登場したのですよ。
ネパールの寺院にある 「タマーキン」 という名の牛の像で、
後ろ向きになって、こちらに大きな金色の睾丸をさらしている
というシロモノです。
どうも、これはガセじゃないらしい。フジテレビのカメラが、実際に現地に行って、地元のヒトたちに 「タマーキン」 の場所をたずねているんです。確かに、誰もが、
タマーキン
と発音してる。
で、実際に、案内してもらうと、タマーキンをコチラに向けた牛の像が登場。
…………………………
ところが、恐ろしいのはココから先なんです。
「タマーキン」 というのは日本語
らしい。どういうことか。
この寺院に鎮座するタマーキンを誇示する牛は、ヒンドゥー教のシヴァ神の乗り物なんです。実は、この牛は、サンスクリット、ヒンディー語、ネパール語では、「ナンディー」 と言うんです。
नंदी nandī [ ' ナンディー ] 「シヴァ神の乗る牛」
サンスクリットで nand は 「喜ぶ」 という動詞です。この動詞から派生したのが、
नन्दिन् nandin- [ ' ナンディン ] <形容詞> 「喜びを与える、楽しませる」
です。これの男性形が、
नंदी nandī [ ' ナンディー ] 「喜ばせる(牛)、楽しませる(牛)」
となります。この牛を 「ナンディン」 nandin とする説も見えますが、これは誤りです。サンスクリット辞典の見出しが nandin- となっているからなんですが、
nandin- は語幹であって、そういう単語ではない
んですね。サンスクリットのサの字も知らないヒトが、辞書を引いて、ウッカリ引用するとこうなるんですが、サンスクリットの引用ではひじょうに多いまちがいです。
…………………………
では、この 「ナンディー」 という牛が、なぜに、「タマーキン」 になってしまったのか。それは、
日本人観光客が、ナンディーを見て、「タマキン、タマキン」 と
呼ぶのを、地元の子どもが覚えてマネしてしまい、
それがオトナのあいだにも広まった
んだそうです。むむむッ!
地元のヒトが、
ネパール語では、「銅を買う」 に聞こえるんです
と言ってましたが、確かに、ネパール語では、
तामा किन्नु tama kinnu [ タマ キンヌ ] 「銅を買う」
と言います。
「タマーキン」 の綴りがネパール語でどうなるか、必ずしもカンタンには判断できません。
तमाकिँ tamakĩ [ タマーキん ]
とでも書くんですかねえ。 Google Nepal でいろいろ検索しても、「タマーキン」 をどう綴るべきなのか、よくわかりませぬ。
ログインしてコメントを確認・投稿する