昨夜の 「ネプリーグ」 で興味深い現象を見た。ファイブツアーズ、すなわち、漢字の読み方を 「ひらがな」 で入力するクイズである。
ナンチャンこと、南原清隆さんが、
「原因」 を “げいいん” と読んで爆死した
のである。
当人は、まったく、キツネにつままれた気分だった
らしい。生まれてこのかた、ずっと、「原因」 は “げいいん” だと思っていたのだ。
実は、これは、まったく正当な認識
なのである。むしろ、「げんいん」 という読みがなのほうが “不正確” なのである。
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日本語の 「ん」 には唯一の音価というのがない。状況に応じてさまざまに発音される。
物理的には、少なくとも12通りの発音がある。
「ん」 を単独で発音するときは、
[ ɴ ]
である。世界的にも珍しい子音だ。
「原因」 をゆっくりと口にすると、日本人は、
「げ・ん・い・ん」 =
[ ɡe: ɴ: i: ɴ: ]
と発音する。
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ところが、続けて発音するとき、[ ɴ ] のあとで母音を発音するのはきわめて難しい。自然な発話では不可能なのだ。ゆえに、物理的には、次のような発音として実現する。
[ ɡẽĩiɴ ]
つまり、「ん」 にあたる部分は、
口が前もって 「い」 の形に変化し、
「い」 の鼻母音をもって 「ん」 に変えている
のである。だから、
「げいいん」
で正しいのである。ならば、たとえば、「鯨飲」 はどう発音するのか、というと、
[ ɡe:iɴ ]
である。つまり、こちらのほうは、ありのままに読みを書くなら、
「げいいん」 ではなく、「げーいん」
なのである。
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つまり、
原因 「げんいん」
鯨飲 「げいいん」
というのは、“正しい読み” ではなく、“正しいとされている読み” にすぎない。自分の発音をありのままに分析する能力のあるヒトなら、
原因 「げいいん」
鯨飲 「げーいん」、「げえいん」
としてもおかしくない。
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「原因」 に “げんいん” という読みがなを振るのは当たり前だ、と思うのは、
ものごとをありのままに観察する能力を失った大人の発想
である。観察力のある子どもならば、
なぜ、「原因」 を “げいいん” と書くと×なのか
と疑問に思ってもフシギではない。
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