これは、1997年にTVドラマが放送された、これまでの刑事ものとは一線を画し、警察組織そのものをドラマの中核に据えた織田裕二主演による「踊る大捜査線」シリーズの劇場版最新作。
2024年のスピンオフ作品「室井慎次」2部作はあったが、織田裕二主演の「踊る大走査線」としては14年ぶりとなる。
プロデュースの亀山千広、脚本の君塚良一、監督の本広克行、そして主演の織田裕二を始め、スタッフ・キャスト共、かつてのメンバーが揃った、これまでの集大成的な映画となっている。
サラリーマンから転職した異色の刑事・青島俊作は、50代後半となる今も、未だ警部補のまま現場に留まり続けている。
そんな青島は、湾岸署から、本庁捜査一課に転属されたが、仕事っぷりは変わらず、出世して警察組織の上層に至った、かつての同僚や同期の手を焼かせている。
そんな青島は、都内のホテルで発生した殺人事件の捜査会議に潜り込み、そこで気がかりな話を聞く――被害者の製薬会社社員が危険なウィルスを持ち出していた、と……
この映画だが、予告編では「世界を救う」と言う台詞や、バイオテロなどの物騒な要素で、スケールを大きく見せているが、これが完全にミスリードを誘うもの。アバンタイトルの誘拐事件がフリだ、と言うのはすぐに判ったが、その後の製薬会社社員殺害とウィルスまでもが本筋に関係がない、と言うのには完全にヤラれた、と思った。
これは、「世界を救う」ような大事件ではなく――連続殺人事件だから決して小さくない、とは言え、その犯罪は決して大きな破局をもたらすものでも、社会を動かすようなものでもない……ある意味、「踊る〜」らしい、と言えばそうなのだが、ちょっと拍子抜けする人はいるかも知れない。
今回の物語の中心となるのは、趣里と白洲迅演じる2人の若い刑事と、真下の息子の若いキャリア警察官僚が、新世代の感性が導く勘や、ネットやAIなどの新技術を駆使して犯人に迫り、しかも、ネットの“特定班”が犯人を突き止めているのに、従来の捜査の段取りを重んじる上層部が逮捕に踏み切らない、と言うもので、これまた「踊る〜」らしいもの。
そこに、実際に50代後半となった織田裕二演じる青島が、若き後進らに想いを引き継ぎ、「踊る〜」が描き続けて来た、警察組織の改革を目指し続ける、と言う胸の熱くなるドラマが描かれるのも、これまたらしさだろう。
また、脚本の君塚良一らしさが出た「室井慎次」2部作とは異なり、本作は大分コメディ要素が強い……これも「踊る〜」らしさだ、とする本広克行監督は、かなりの笑いと遊びを持ち込んでいる。
前述のアバンタイトルそのものがフリ、と言うのに始まり、度々登場のスリーアミーゴス、警察トップを立木文彦/津田健次郎/関智一と言うイケボイス声優で固めたり、警察医官として登場する佐藤二朗の小ネタまで、仕掛け満載だったりする。
まぁ、本広監督らしい、とは思うが……今回の映画版としてはさすがにやり過ぎじゃないか、とひいてしまった部分もあったのが正直な所だ。
還暦近い織田裕二が冒頭から走り回る(クランクアップ後には寝込んだ、と言うのにも納得だ)熱演は見物だし、これまでの「踊る〜」の集大成となる、正に“全員集合”なキャストの顔ぶれも懐かしい(和久さんまでがAIで合成されて声の出演をするのだ)。
ただ、世代交代を打ち出すなら、若い刑事らの活躍っぷりをもっと見せて欲しかったなど、脚本の粗さも目立つ。
アバンタイトルに比べ、クライマックスとラストのしょぼさも対照的で、竜頭蛇尾的な内容のせいもあり、いささか残念な印象に終わってしまった。
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