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2026年06月23日10:30

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「黒牢城」感想

 これは、「蛇の道」、「Cloud/クラウド」の黒沢清監督が、米澤穂信の同題小説を映画化したもの。
 主演は本木雅弘。紅一点のヒロインに吉高由里子。共演にも、菅田将暉、オダギリジョー、柄本佑ら主役級が揃う豪華キャストだ。
 
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 戦国時代の天正六年(1578年)、織田信長配下の武将・荒木村重が叛旗を翻す。翻意を促すために送られて来た使者の黒田官兵衛を村重は地下牢に監禁し、伊丹の有岡城に立て籠る。
 毛利攻めから手が抜けない織田勢が、有岡城を攻め合無ぐ中、城内では人質の少年が変死……村重はやむを得ず、官兵衛の知恵を借りるのだが……

 ホラー映画作家とされる黒沢清監督だが、自分は、日常に潜む不穏なサスペンスを得意とする、と思っている。
 本作も、そうした黒沢清監督の作家性が色濃く出たものとなっており、物語は、座敷や茶室、そして地下牢での対話シーンが多くを占め、城攻めの攻防戦などの合戦シーンは殆どない――それを以て「籠城中なのに緊迫感がない」と言うのは筋違いだろう……実際、有岡城が1年以上籠城を続けているのは、殆ど戦は起きていなかった、と言う事でもあるのだから。
 そして、物語は、有岡城での1年で発生する4つの怪事件を、村重が官兵衛の知恵を借りて解き明かして行く、と言うオムニバス形式……そうした繰り返しもまた黒沢清監督らしい所であるし、その中で徐々に明かされて行く村重の不戦の想いと、最後の決断が、本作の描く物語の中心となるのだ。

 原作小説は未読だが、映画には幾つもの問題を感じ、最後も腑に落ちるものでなかったのが残念だった。
 まずは、舞台となる有岡城内の描写が、現存する幾つかの城郭・寺院を組み合わせての撮影となった為、戦国時代の大名の居城としては広く、豪華に過ぎるのではないか、と言う違和感と、あまりに拙い合戦描写……まぁ、この辺は目につくが本筋ではない。
 問題なのは、荒木村重が概ね史実通りである一方、相対する官兵衛の人物造影だ。まず、後の黒田官兵衛は、この時点では小寺孝高だった筈。そして、暗黒の地下牢に幽閉され、その中で、村重への憎悪を滾らせ、更には己の言葉のみで人を殺める事が出来ると知り、穢れと病いで外観的にも怪物と化して行く……と言う、この物語で村重の対照となるべき描写が、かなりあっさりと仕上げられている事――そうして、暗黒の地下牢で、意図せずして怪物を育ててしまい、その怪物から、城から、更にはそんな怪物の生きる戦国の世から逃げる、と言うのが、最後の村重の行動の本質となるのではなかろうか。
 村重が去った後の有岡城の惨状や、家臣や一族の辿った運命……そうした描写を避け、綺麗にまとめた最後には物足りなさを覚えたのが正直な所だ。
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