mixiユーザー(id:124952)

2025年07月23日23:13

166 view

「桐島です」感想

 これは、1970年代に社会を震撼させた連続企業爆破事件で指名手配されていた桐島聡の半生を映画化したもの。
 監督は「夜明けまでバス停で」の高橋伴明。出演は「ケンとカズ」の毎熊克哉、「心平、」の奥野瑛太、「春画先生」の北香那。

 1975年、三菱重工爆破事件で多数の犠牲者を出したことで、社会活動家は、深い葛藤に苛まれる――こんな犠牲を出した先に革命が成し遂げられるのか、と……
 大学生だった桐島聡は、東アジア反日武装戦線に参画する組織「さそり」に属し、人的犠牲を出さない爆弾テロを仕掛けて行くが、やがて組織は警察当局の捜査によって壊滅状態になり、指名手配された桐島は偽名を使って逃亡し、内田と名乗って工務店での住み込みの職を得る。
 それから歳月が流れ、表面的には穏やかな日々の暮らしの中、桐島はライブハウスで知り合った歌手キーナの歌「時代遅れ」に心を動かされたりもするが……

 桐島聡については、足立正生による「逃走」と言う映画が今年公開されている(残念ながら未見)が、本作については、活動家としての桐島聡よりも、内田洋として生きた、その後の人生にスポットを当てているように思う――それは、正に「活動家」であった足立正生に対し、高橋伴明監督は大学卒業後は映画人として生きて来たからだろうし、「夜明けまでバス停で」でも高橋監督と組んだ脚本の梶原阿貴は父親が爆弾犯であり、活動家の「その後」をよく知るからでもあるだろうか……

 そうして描かれる内田洋のしての半生は、それでも筋の通ったものだった、と映画は描く――規則正しく、物作りに勤しみ、不当な外国人差別には怒り、そして詫びる……「こんな日本にして悪かった。すまない」と――そう、桐島は己の「正義」を曲げなかったのだ。負い目を抱えていたにせよ、それは「間違った」でも「罪を犯した」でもなく、世界を変える事が出来ずに「負けた」と言う事だけ……それを貫くために逃げ、多くを失ったものの、それでも筋を通した人間の生き様には、やはり胸を打つものがある――そんな想いを代弁する「時代遅れ」の歌詞にある“時代遅れの男”だったとしても、だ。
 惜しいのは、タイトルにもなっている「桐島です」が、彼の勝利宣言だったのか、敗北を受け入れるものだったのか、そこを明確に描いていない事……映画だと、病による意識混濁での発言のようにも思え、解釈を観客に委ねるものとなっている――だが、高橋伴明監督と、脚本の梶原阿貴以上に、桐島聡の代弁が出来る者がいるだろうか?ここは、その代弁をして欲しかったように思う。

 この映画に対しては、当然「反日を許すべきではない」、「犯罪者を美化している」と言う非難はあるだろう。だが、成功しなかった全ての革命は犯罪だったのだし、彼らが変える事の出来なかった現在の社会が、よきものであるか、と問われると、やはり疑問を感じずにはいられない。
 観客を選ぶ映画だとは思うが、これは観るべき価値のある1本だと思う……確かに、「時代遅れ」ではあるかも知れないけれど。
3 1

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2025年07月>
日 月 火 水 木 金 土
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

過去の日記

2026年
2025年
2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年