これは、新世代韓国文学として話題になったパク・サンヨンのベストセラー連作小説「大都会の愛し方」より「ジェヒ」を映画化したもの。
ソウルの大学で、ゲイである事を周囲には隠しながら静かに生きて来たフンスは、ルールに縛られず、自由奔放に生きる海外帰りのジェヒと出会う。何処か大学生活に馴染めないふたりは、それ故に意気投合し、共に暮らし始める。
やがて、ふたりはお互いを認め合い、かけがえのない存在と認識して行く――そうして共に暮らすようになって10年、人生の転機を迎えたふたりは……
本作の主役、ジェヒ役は「破墓/パミョ」のキム・ゴウン、フンス役はノ・サンヒョンで、2人共、整形大国の韓国俳優には珍しい、生来の一重瞼……それが、周囲に流されず、自分らしさを貫く、と言う象徴になっているように思う。
これは、そんな2人の生き様を描いて行く物語なのだ……ジェヒは、自分らしさを押し出して決して退かず、フンスは、自分らしさを隠して自分を守る――対照的ではあるけれど、揺るがない「自分らしさ」を持つふたりは「あんたらしさが何で弱点になるの?」、「お前らしさは弱点にならない」と、お互いを認め合っている。
映画は、そんな2人が出会った20歳から、クライマックスを迎える10年後、エピローグとしてのその3年後までを描くのだが、これをフンスを語り手に回想形式で描いており、長い時間を手際よく見せると共に、ドラマの配分もよく、長い時間軸ながら、ダイジェスト感もなく見せているのはなかなか巧い。
魅力的なのは、ふたりが同居する日常描写で、恋多き女で誰か別の男に夢中なジェヒと、ゲイで女には恋愛感情を持てないフンスの距離感がいい。
勿論、異性愛者であるジェヒは、フンスに特別な感情を持つ事もあるだろう。でも、「こいつは絶対に自分に恋しない」と判っているが故の切なさ。でも、フンスもまた、ジェヒを誰よりも大切に想っているのだ。それは、クライマックスで、これまでにない切迫したジェヒの声に「すぐ行く」と走り出すフンスの姿で描かれる。これは胸熱ものだし、その後で、ふたりが互いを守り合うために発した言葉も胸を熱くするが、それを、いささかコミカルに描いて、感動のクライマックスにしない辺りの演出も絶妙だ。
「ラブ・イン・ザ・ビッグシティ」と言うタイトルの癖に、ふたりの間に恋愛感情が生まれる事はなく、キスシーンさえないのだが、男女間の恋愛を超え、魂で惹かれ合う、生涯の友、となったふたりの友情物語は、観る人にとってもかけがえのものとなるのではないだろうか。
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