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2026年10月12日05:49

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「どこよりも遠い場所にいる君へ」感想

 これは、阿部暁子による同題青春小説を劇場版長編アニメーション映画としたもの。
 監督は和田純一。キャラクターデザイン・総作画監督を「超かぐや姫!」のへちまが務めている。
 声の出演は、石橋陽彩、永瀬アンナ、土屋神葉など。それに加え、藤木直人、玉木宏が出演。

 日本海に浮かぶ采岐島。その島には“神隠しの入り江”と呼ばれる場所があり、そこでは“神隠し”だけでなく、“稀人”と呼ばれる、“ここ”には居ない筈の人が現れるのだ、と言う……
 ある事情で中学まで過ごした横浜を離れ、采岐島の高校に“島留学”している15歳の月ヶ瀬和希――初夏、何時もの放課後のようにひとり“神隠しの入り江”で過ごしていた和希は、海岸で倒れている少女に気づき救助する。秋鹿七緒と名乗った少女だが、家族との連絡がどうにもつかず、和希と共に彼女を救助した、島の庄屋の子孫と言う高津と言う青年に保護される事になった。
 七緒の事が気になり、たびたび放課後に彼女のもとを訪れるようになった和希は、ある日、衝撃的な言葉を聞く――彼女は昭和33年生まれで、昭和49年から“ここ”に来たのだ、と……

 本作の舞台となる采岐島と言うのは、隠岐の島がモデルだろう。島の高校と“島留学”制度は創作のようだが、“神隠しの入の江”社のある奇岩は、隠岐の島の観光名所のローソク島をイメージしたものと思われる。
 アニメとしての出来は水準以上で、キャラも背景も綺麗に描かれている。キャラクターの絵柄に既視感があったのは「超かぐや姫!」のへちまの絵だったからか、と観た後で納得した。
 気になったのは、背景に対し、キャラクターが妙に小さく見える場面が散見される事だろうか。
 
 本作の主人公・和希――これがまた妙にいじけた人物で、人間関係を嫌ってひとりになりたがり、でも外見は端正で、音楽の才能があって、と言う碇シンジ以降、本当によくあるタイプの主人公で、またか、と思ったりもしたのだが……「時給三〇〇円の死神」と違って感情移入出来たのは、いじめ被害、と言うトラウマがあると言う事であり、納得は出来た。
 ただ、本作は物語に思った以上に引き込まれた……“神隠し”と“稀人”と言う超常現象を描きながらも、伝奇ミステリーの方向には深堀りせず、現実に絶望し、居場所を失った少年と少女の出会いと再生の物語としている……終盤、七緒の手紙で、散りばめられた多くの伏線が明かされ、謎が解けて行くのは気持ちいいほどで、これはよく出来ているし、感動的でもある。
 和希の両親についてのその後がなかったのがちょっと気になったけど、綺麗にまとめられ、タイトルの意味に納得のラストもいい。
 
 絵柄などから若者向けのファンタジー恋愛ものと思われるかも知れないけれど、これは“時間”によって引き離された切ない恋の物語……これは大人をも泣かす映画だと思う。
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