これは、新疆ウイグル地区出身の映像詩人ジン・イーの長篇デビュー作。
出演は、本作が映画初出演となるカザフ族の少年イェスル・ジャセレフ、同じく映画初出演のシベ族の少女レン・ズーハン。
新疆ウイグル地区北部の草原地帯にある小さな村で。カザフ族の13歳の孤独な少年アルシンは、植物を観察し、記録する日々を過ごしていた。
そんなある日、漢民族の少女メイユーが村へやって来る。彼女は、アルシンの日常に変化を生んだ――ふたりは共に草原を歩き、植物を探し、緩やかで暖かな時間を過ごす。やがてアルシンの心の内には初恋とも呼べる感情が生まれる……だが、外の世界はそんなふたりの関係にも影響を及ぼして……
この映画だが、何と言っても新疆ウイグル自治区の雄大な自然の風景を、美しく抒情的に捉えた映像が素晴らしい。近年、民族弾圧や人権問題などネガティブな報道もあって、海外のメディアが入らず、目にする機会が少なくなっているウイグル自治区の風景や、そこに暮らす人々の生活なども興味深く見た。
物語は、素朴な少年の出会いと別れを中心に置く。アルシンの前に現れたメイユーはほっそりと華奢な少女で、まるで異国の花の精……初めての恋となって行くその想いを美しくも繊細に捉えた映像は確かに一見の価値あり。
そして、語る馬、歩く木々、植物標本に宿る祖先の記憶……と、現実と幻想の交錯する映像詩が綴られていくのだ。
だが、アルシンは動かず、物語も動き出さない……都会で暮らすアルシンの母は、スマホで呼び出されて慌ただしく戻り、メイユーもまた上海へと転校して行く……そんな外の世界に揺さぶられはするが、大地に根を張るように動かないアルシンを、もどかしく思うと共に、退屈してしまい、穏やかな映像と音楽に眠気を誘われた、と言うのが正直な印象だ。
美しく幻想的な映像世界を持つ映像詩だが、どうにも訴えかけて来るものが曖昧で解釈に迷う――それは、現在の新疆ウイグルだからなのでは、と言う要らぬ心配をもしてしまった。
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