これは、2018年のベルギー映画「母親たち」(日本未公開)を、ジェシカ・チャステインとアン・ハサウェイのW主演でリメイクしたサスペンス。
監督は「青いパパイヤの香り」、「博士と彼女のセオリー」などで撮影監督を務めたブノワ・ドゥローム。
1960年代のアメリカ。庭付き邸宅の並ぶ高級住宅街で、隣同士の家に住むセリーヌとアリスは、まるで双子の姉妹のように似通った暮らしを送っていた――同じ庭付きの一軒家、高収入の夫、子供も同い年の一人息子……ふたりは互いの家の合鍵を持ち、息子の送迎や買い物などの家事をシェアしながら幸せな生活を送っていた。
ところがある日、セリーヌの息子が転落事故で亡くなった事で、ふたりの暮らしの相似性が崩れ、人間関係も変化して……
本作の原作映画の原題は「Duelles(対決)」で、英題は「Mother's Instinct(母性本能)」だと言う……本作は、そのように様々な見方が出来る内容であり、その様々な要因が、セリーヌとアリス、2人の母親を翻弄していくのだ。
2人は、セリーヌの息子の死の以降、関係性を狂わせていく……まるで、双子のように似通った暮らしは脆くも崩れ、それまでの家族のように親密だった関係性が恐怖に変わって行く、と言う展開も上手い。
そして、本作の仕掛けのひとつが“似通った”ように見える2人の内実がかなり異なる事――専業主婦が女の幸せ、と言う事を疑わないセリーヌに対し、女でも社会に出て働きたい、と言うアリス……アリスの考えは、今となっては当たり前だが、1960年代では当たり前ではない。アリスはその事を、家の外では伏せており、その事と、またセリーヌが抱える事情、それを互いに秘密にしていた事が最後の悲劇に繋がる、と言う構成は巧みだし、まるで被害妄想のように思えたアリスの訴えが、実はジャーナリスト志望だった彼女が見抜いていた真実だった、と言うのが判る終盤の展開にも息を呑む。
本作は、“隠された事”による行き違いやサスペンスを描くものであり、判り難い部分はある。だが、この物語は正に“家”と言う存在に縛られ、そして隠された“母”と言う存在を描くものなのだ。
その意味では、原作映画の邦題「母親たち」が、もっともその本質を捉えているように思う。
ログインしてコメントを確認・投稿する