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2026年08月03日23:32

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「PEACOSK/ピーコック」感想

 これは、日本の友達代行業に着想を得た、オーストリア出身のベルンハルト・ウェンガー監督の長編デビュー作。
 出演は「西部戦線異状なし」のアルブレヒト・シュッフ。
 
フォト


 完璧な息子、教養ある恋人、自慢の父親――“マイ・コンパニオン”は、顧客のどんな要望にも応じて理想的な人物を提供する友達代行業。マティアスはそのトップパフォーマーとして、求められる役割を完璧に演じ分け、さまざまな人格を生きて来た。
 だが、恋人のソフィアから「本当のあなたを感じない」と告げられ、別れをつげられたことで、彼の完璧な仮面は静かに剥がれ落ちて行き……


 日本の友達代行業とは、映画「レンタル・ファミリー」でも描かれた、家族や友人に扮するキャストを派遣するサービスの事……これは、日本で実際に複数の事業者が営業しており、本作はそうした事業をリサーチして作られた、と言う。
 欧米にはない、こうしたサービスを、それでも日本人であるHIKARI監督が描いた「レンタル・ファミリー」が、寂しいキャストが役を演じるうちに感情移入し、役としての一線を踏み越えて、本当に家族や友人になろうとしてしまう、と言う展開を見せたのと対照的に、ベルンハルト・ウェンガー監督は、多くの役を演じるうちに、キャストが自分自身を見失ってしまう、と言うアイデンティティ・クライシスを描いている。
 マディアスが、様々な人物を演じるうちに、役を与えられないと、自分と言う人物がどのように考え、そして判断するのかが判らなくなって行く……と言うのは、アイデンティティが“家”ではなく“個人”に帰する、と言う西欧的なもののように思えるが、近年、SNS上の“作られた自分”と、本当の自分との乖離に悩む人が少なくないように、これもまた現代が抱える普遍的な問題を代弁するものとなっているのかもしれない。

 タイトルのピーコックとは孔雀の意味で、孔雀と言えば華やかな尾羽のみが印象に残り、本体である鳥のイメージが希薄と言う印象から、多くの華やかな役に、本人自身が埋もれて行く、と言う事を示しているのだろう……だが、疑問に思うのは、“マイ・コンパニオン”のキャストに限らず、役者や俳優と言う演者とは、そもそもそう言うものではないのか?と言うこと。
 また、終盤の展開もちょっと残念……上流階級の顧客の要望に反発するマティアスが、破滅的な行動を取るのだが、それがアートパフォーマンスとして受け入れられてしまう……と言うオチは、確かに皮肉を効かせているものの、最終盤で話を発散させてしまったように思え、「レンタル・ファミリー」のような鮮やかさを感じなかった。

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