これは、スカーレット・ヨハンソンの監督デビュー作で、2025年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品された。
主演は、「テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ」のジューン・スキッブ。共演に、「28年後...」シリーズのエリン・ケリーマンと、キウェテル・イジョフォー。
94歳のエレノアは、夫を亡くした後、親友のベッシーとフロリダで共に暮らしていた。
そのベッシーも亡くなり、エレノアはNYで暮らす娘の元に身を寄せるが――娘も孫も、自身の暮らしがあり、エレノアは孤独な生活を強いられる事になる。
見かねた娘は、ユダヤ系老婦人の合唱サークルを紹介するが、エレノアは誤ってホロコースト生存者の自助グループの集まりに紛れ込んでしまう。その場をやり過ごす為、ホロコースト生存者でもあったベッシーの半生を、自身の記憶として話したエレノア……だが、ジャーナリスト志望の学生ニナは、エレノアの語る激動の半生に感銘を受け、彼女に近づく。ニナとの新たな友情に心躍るエレノアだったが、悪気のない嘘は独り歩きして……
この映画ですが、嘘がバレて追い詰められるような内容だと辛いな、と鑑賞を迷ったりもしたのですが……TV番組が関わる、と言う事で思いの外、大事になるのでは、との予想を裏切り、みんな大人の抑制的対応に落ち着いて一安心(?)。
これは、エレノアの嘘は、現在、巷に溢れている“加害者”による保身や受益の為の見苦しいものとは異なり、あくまで“被害者”側のもので、「聞いた話だけど」として“語り部”として話す分には全く問題のない、と言うのが理解と同情を引き寄せるからだろう。
また、「このまま墓に持っては行けない。誰がに知って欲しい」と言う想いと言葉を、受け取った人もまたそのままではいられないのだ、と言う事を思い知らされる。
主演のエレノア役のジューン・スキップは、本作では“口の減らない”おばあちゃんを好演。また、ベッシー役のリタ・ゾーハーは、自身もまたホロコーストからのサバイバーだったそうで、役と言葉に、その重みを生んでいた、と思う。
初めてカメラの後ろに座るスカーレット・ヨハンソンは、演出に自信を持てていないのか、伏線の張り方が露骨――ラビが語る「よい嘘ならば咎められない」とか――だし、内容ばかりか想いまでも台詞で語らせ過ぎているようにも思うけど、印象的なカットも多く、確かなセンスを感じた。初監督作品としては、上々の1本ではないだろうか。
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