これは、ドイツの作家レオニー・スヴァンの小説を「ミニオンズ」共同監督のカイル・バルダが監督して映画化したもの。
出演は、ヒュー・ジャックマンにエマ・トンプソンと、意外にも豪華だが、主役となるのは実は羊たちなのだ。
イギリスの田舎町で、羊飼いのジョージは、羊と共にひとり暮らしている。毎晩、ジョージは牧場の羊たちに、ミステリー小説を読み聞かせていた。
そんなある日、ジョージが死体で発見される。警察は事故として処理する方向だが、羊たちはジョージの死に納得せず、賢いリーダーのリリーを筆頭に、独自に捜査を開始する。
調べを進めるうち、ジョージには相当な額の遺産があることが判る……相続権のある娘もやって来た。
事故か、遺産相続のトラブルによる殺人なのか――羊たちはジョージの無念を晴らし、真相を明らかに出来るのか?
この物語、ほのぼのとしたコメディのようでありながら、その実、以外と毒もあれば苦みもある内容。
特に、羊たちが「死」を、「1,2,3」の掛け声で忘れてて平和な日常へと逃避してしまう、と言う描写……これは決して笑えるものではなく、都合の悪い事を見ないふりして日常を過ごす我々の姿をカリカチュアライズしたものだろう。これに違和感のない人は、何かに“家畜化”されている、と認識した方がよいのではないだろうか。
映画は、そんな羊たちが、目の前の悲劇から目を背けずに、現実に立ち向かう、と言う意外にも骨太な展開を見せていくのだ。
主演とされるのはヒュー・ジャックマンなのだが、序盤で殺されてしまうので存在感は大きくない……むしろ、ジョージの娘役や、羊たちの後押しで事件解決に導く若い警官、そして真犯人などに人気のある若手を起用した方がよかったかもしれない。
物語は、物言わぬ羊たちに事件を解決させる為、かなり強引な個所や展開も目立つのだが、事件のトリックは決して不条理なものではなく、ミステリーとしても楽しめるし、思い込みや習慣を改める事で見えて来る「希望」と「未来」の物語でもある、と言うなかなか見応えのあるもの。
ラストシーンの雲になった羊には、思わず涙してしまった。
ログインしてコメントを確認・投稿する