これは、「Playground/校庭」のローラ・ワンデル監督によるヒューマンサスペンス。「Playground/校庭」と同じく、本作もダルデンヌ兄弟が製作に名を連ねている。
出演は「CLOSE クロース」のレア・ドリュッケール、「あのこと」のアナマリア・ヴァルトロメイ。
腕を骨折して小児病棟に入院した4歳児アダム。栄養失調で発育不良のアダムの様子から裁判所は虐待若しくは育児放棄を疑い、シングルマザーの母親・レベッカに対し、面会を制限する命令を下す。
だが、自らもシングルマザーである看護師長のルシーは、息子を失うことを恐れるレベッカに寄り添う立場を取るが、レベッカの偏った、そして軽率で衝動的な行動に振り回され、事態は更に混沌として……
この映画、既視感があるのは、忙しい病棟の状況を、主人公のルシーの肩越しに映し出す映像が、映画「ナースコール」と殆ど同じであるせい。異なるのは、ローラ・ワンデル監督ならではの被写体深度の浅い映像と、病棟の多忙さと人手不足よりも、移民や女性、子供と言う社会的弱者にスポットを当てている所になるだろう。
物語は、レベッカと4歳の息子・アダムを中心に展開して行く。貧しい移民でシングルマザーのレベッカは、間違いなく社会的弱者であり、そして何の支えもなく、孤立している――「現在」だけを映す本作では語られないが、その孤立がレベッカを(宗教か、マルチ商法が、だろう)思想的に歪ませ、更に息子に依存させた。そして、その歪んだ母性が、アダムを母親に依存させ、結果として彼は母親の用意する食事しか口にせずに栄養失調に陥ってしまったのだ。
これはアダムを保護するしかない、と言う裁判所や病院の判断は、客観的には妥当に思えるが、ルシーは、同じシングルマザーとしてレベッカに共感してしまい、ルシーは、その職務を超え、孤立無援(何しろ、レベッカでさえ当てに出来ないのだから)で戦う事になるのだ。
映画が描くのは、社会的弱者が、弱者故に連帯するのではなく、弱者の中で更に弱い者を虐げる、と言う救いのない図式――「移民だから」と差別されている者が「女医だから」と、診察に抵抗し、レベッカもまた己の心の安定と引き換えに息子を虐げているのだ……
いかにもダルデンヌ兄弟らしい、ドキュメンタリータッチで救いのない現実を写し出す本作だが……残念だったのは、事実上のクライマックスでのアダムの言葉だ。あれは、4歳児に言えるものではないだろう――確かに、物語の中では決定的とも言える台詞ではあるのだが、映画があまりにも現実に寄り添ったものだったが故に、この如何にも大人が作った台詞にどうにも違和感があり、受け入れ難かった。
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