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2026年05月05日10:57

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「ウィキッド 永遠の約束」感想

 これは名作児童文学作品「オズの魔法使い」の外伝として作られ、20年以上も愛され続けている名作ミュージカル「ウィキッド」を、「イン・ザ・ハイツ」のジョン・M・チュウ監督が、前後編2部作の映画としたもので、本作「永遠の約束」が後編で完結編となる。
 出演は、シンシア・エリヴォとアリアナ・グランデのW主演、ジョナサン・ベイリー、ミシェル・ヨー、ジェフ・ゴールドブラムら主要キャストも続投となる。

 オズの秘密を知ったエルファバは、“悪い魔女”の悪名を着せられ、オズの敵とされるが、森に潜み、自由を奪われた動物たちのための戦いを続ける。一方、グリンダは“善い魔女”となり、名声と人気を得るが、オズの秘密は、彼女の心にも暗い影を落としていた。
 そこに、突如現れた“カンザスから来た少女”によって、オズの国は大きく揺れ動くうことになるのだが……

 本作は、2024年公開された「ウィキッド ふたりの魔女」の続編に当たるが、これはちょっと公開間隔が開き過ぎだったように思う……オリジナル舞台版は幕間を挟んだ2部構成だし、映画版も製作は連続して行われていたそうだから、どうにかならなかったのか、と思う。
 また、原題のサブタイトル「For Good」を「永遠」と訳している事に違和感があって調べたら、「For Ever」だけでなく、「For Good」にも永遠、と言う意味があるのは理解した――永遠に続くものは、「みなのために」ではなく「善き方を目指す」先にあるのだ、と言うこのサブタイトルは映画を最後まで見ると、腑に落ちるものとなっているように思う。

 エルファバが“西の悪い魔女”になるまでを描いた前作「ふたりの魔女」に対し、本作は「オズの魔法使」を裏面から描くものとなる――表面は描かれないので、“カンザスから来た少女”にピンと来ない人は、「オズの魔法使」を予習しておかないと、本作の展開を理解出来ないように思う。
 そんな物語は、前作にあった学園青春ドラマとしての楽しさや明るさが殆ど消え、ジョン・M・チュウ監督が得意とする派手なミュージカルシーンも目立たず、華やかな印象はない……その一方で、まるで現実を引き写したような、弱者(映画内では動物たち)への差別と迫害、虚栄の上に築かれた支配の構造を描いて、主人公らを反抗させる、反体制的内容に終始する――これが、正に現実社会におけるリベラル失墜と、強権的な指導者へ追従する事をよしとする風潮の中で、本作の低評価に繋がったのではないだろうか?(前作がアカデミー賞10部門ノミネートに対し、本作のノミネートはゼロ)
 然しながら、本作の掲げるテーマと、そして、最近の社会情勢を踏まえてアップデートされた内容、その双方とも、前作に対して全く遜色のあるものではない、と思う。
 それを代表するのが、本作の為に作られた新曲「No Place Like Home」だ。元々は、「オズの魔法使」の最後で出て来る台詞なのだが、本作では、それを迫害に耐えられず故郷を去る動物たちに歌う――「故郷が一番、でも、もう暮らせない」と言う痛みと悲しみ……エルファバは踏み止まって戦うが、それが出来ない事の方が多いのだから――ここで歌われている内容は、ドキュメンタリー映画「ノー・アザー・ランド」が記録した内容と同じなのだ。
 
 「もう戦えない」と言う現実、身の回りに次々訪れる不幸、それでも抗うエルファバの選択は、哀しいと同時に考えさせられる……ある意味で、それは「幸運」でもあったから。
 エルファバは、唯一の親友・グリンダに全てを託し、彼女はオズの体制を内側から突き崩す……虚栄の上に築かれた体制は、その虚栄が生み出したアイコンによって、呆気なく崩壊する――この展開は確かに痛快ではあるが、いささか展開を急ぎ過ぎた感があるのと、ミュージカルらしい開放感に欠けていたのも惜しい。
 それでも、虚栄のシンボルであった杖を捨て、「永遠の約束」を誓ったグリンダの“善い”選択を期待して物語は一見して華やかに終わる――この終わりにすっきりしなかったのは、故郷を失ったエルファバと、大衆に迎合しがちなグリンダへの不安……そして、現実には、反体制派にとってのグリンダはいない、と言う事だろうか。
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