mixiユーザー(id:124952)

2026年03月11日05:56

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「ナースコール」感想

 これは、アカデミー賞国際長編映画賞のスイス代表作品にも選出された社会派ヒューマン・ドラマ。
 主演は、「ありふれた教室」のレオニー・ベネシュ。監督・脚本は「ハイジ アルプスの物語」の脚本を担当したペトラ・フォルペ。

 州立病院で働く、プロ意識の高い看護師フロリア。その日の遅番シフトは、同僚の研修と急な病欠によって、25名の患者がいる病棟を、2人で担当する、と言う高負荷体制となった。しかも、フロリアは看護学生のインターンの面倒まで見る事になる。
 それでも、フロリアは患者たちに誠実に接する。だが、限界を超えた多忙さで病棟を駆け回るフロリア自身の我慢も限界に達して……

 これは、主人公フロリアに密着するカメラを通し、現在の病棟で看護師がどのような仕事をこなしているかを描くもの。
 患者たちへの定時検診に加え、投薬に点滴液の交換、入院患者の対応、手術室への搬送と、目の回るような忙しさ。電話が入れば受け答えせねばならず、ナースコールが入れば駆け付けなければならない。
 フロリアは優秀な看護師で、職務に熱心だからこそ、余計に抱え込んで仕事を増やしてしまう、と言う悪循環……真っ先に駆け付けるし、対応する件数も多いから、苦情やクレームを受け付けるのも人一倍……まぁ、これはどんな仕事でも似たような事はあるのだろう、と思う。仕事が出来る人間に、仕事は集中し、だからこそ潰れてしまう。
 映画内でも、それは丁寧に、そして巧妙に描かれる……集中する仕事、高まるストレス――そして、起こるべくして起こる医療事故……

 そんな“現実”を描く本作は、ヒューマン・ドラマと謳いつつ、その描写はほぼ戦争映画であり、展開は、時にホラー映画に近接する……そして、これが洒落にならないのは、描かれているのがほぼ現実、と言う事なのだ。
 映画原題は「HELDIN」。ドイツ語で「ヒロイン」の意味だと言う――人手不足の病院で、家庭も犠牲に(フロリアは、この仕事を続ける為に離婚した)、医療の為に身を粉にして働くフロリアの行為は確かに“英雄的”ではある……だが、仕事に英雄たる事を求められると言うのは、本来あってはならない事ではないのだろうか。

 映画はそんなフロリアの遅番の8時間を描く……13時に入って、21時に交代、残業をして22時には帰る、と言う感じだろうか?
 戦場のようだった病棟も、医師が帰宅し、診療も面会も終わると落ち着きを見せ始める……映画は、最後にほろりと心温まる展開を見せもするのだが、エンドロールでまた恐ろしい現実を見せるのだ。
 スイスでは、2030年には3万人の看護師が不足する、と……そして、その時、助けを国外に求める訳にも行かない。なぜなら世界では、420万人の看護師が不足しているのだから……正に現在、これまでのような社会的サービスそのものが崩壊の危機に直面しているのかもしれない……そんな恐ろしさを感じる1本だ。
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