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2026年01月30日00:14

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「恋愛裁判」感想

 これは、「淵に立つ」の深田晃司監督が2015年に開かれた実際の裁判から着想を得、それから10年の年月をかけ、元・日向坂46の齊藤京子主演で撮り上げたヒューマンドラマ。
 共演は、倉悠貴、唐田えりか、それに人気声優の津田健次郎。

 人気のアイドルグループ「ハッピー☆ファンファーレ」のメンバーで、センターを務める真衣は、中学時代の同級生で、大道芸人の間山敬と偶然再会し意気投合、やがて恋に落ちる。
 アイドルとして背負う“恋愛禁止”ルールと、抑えきれない感情との間で葛藤する真衣。しかし、ある事件をきっかけに、彼女は衝動的に敬のもとへと駆け寄るのだった……
 8カ月後、グループを脱退し、芸能界も引退した真衣は、所属事務所から「恋愛禁止」の契約に違反したとして損害賠償請求され、裁判で争う事になって……

 本作の主人公・真衣を演じるのは元・日向坂46の斎藤京子――つまり、本物のトップアイドルであり、「推しの子」の齋藤飛鳥もそうであったように、“本物”が持つ、文句なしの存在感を見せている。映画は初出演だと言うが、この映画は彼女なしには成立し得なかったものと思う。
 共演者も、現役のアイドルや歌手であり、彼女らが歌うアイドルソングも、この映画の為に作られたオリジナルで、シングルカットしてもちゃんと売れそう。振り付けや、衣装にも隙がない。
 さらに、「ハピ☆ファン」のステージには、彼女らのファンクラブが動員され、応援パフォーマンスまでが本物――映画は日本のアイドル文化をリスペクトし、それをちゃんと描く、まるでよく出来たドキュメンタリーのような、アイドルバックステージものとして出来ている。
 さらに好感が持てるのは、事務所の社長以下スタッフに誰も悪人がいない、とする事……確かに、この物語であれば、「初心な少女と搾取する悪い大人」と言う図式に嵌めるのは簡単なのだが、本作は敢えてそれをしない。そんな、真っ当な事務所でも、その中で、個人の「恋愛」を、契約書で禁止すると言う異常な事が起きてしまう、と言うのが、この映画の中核となるのだ。
 尚、本作は当初より海外セールスを意識しており、フランスでは国内に先行して公開された。これは、「国宝」などより、日本社会の特異性を見せる1本、と言えるのではないだろうか。
 (蛇足だが、深田晃司監督はフランスでの公開時に「児童搾取を容認するのか」と言う批判を浴びたと言う)

 深田監督作品は、その絵作りが印象的なのだが、本作において、それは前半部のふわふわしキラキラ輝くアイドルのステージから、四角四面の裁判所に舞台を転換させる、その対照性において表現される。
 物語的にも、バックステージもの的な前半に対し、後半は、いかにも深田監督らしい人間ドラマに転ずるのだ。
 勿論、その中心は真衣と敬のふたりであり、ふたりで争う裁判を物語は追う……その中で、理不尽さに納得出来ない気持ちを持て余す真衣と、不安と面子の間で揺れる敬による、ふたりの恋愛模様の変化が描かれる。
 そして裁判の中、迫られた判断により、恋は終わる……真衣に夢を見せた敬が地に落ちた時、真衣の恋は終わった、とするこの描写も残酷なまでに冴えている。
 そんな真衣の先が見えない裁判を変えたのは、偶然の出会い……ダンススタジオでアイドルに憧れる小学生のダンスを見守る真衣の表情は、これまでになく優しく、それからの彼女の戦いを変えたように感じられた。

 あと、映画は、真衣、菜々香、梨沙の「ハピ☆ファン」の寮生活組3人の恋愛模様の行く末を見せているのも面白い。
 映画前半で見せた3組のカップルがどうなったか……最終盤で語られる梨沙のあっけらかんとした告白は、日本社会のDEI対応の遅れを射抜く、痛烈な描写ではないだろうか。

 ラストシーンは”だるま朝日”。
 美しい光景に希望を描きながらも現実は「クソさむい」と言う描写は、正に現実を投射した、見事なものだったと思う。
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