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2025年12月31日09:12

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「世界一不運なお針子の人生最悪な1日」感想

 これは、スイスの田舎町を舞台に、お針子が針と糸の力で運命を切り開いていくクライムサスペンス。
 監督は、19歳で制作した同題の短編(https://www.youtube.com/watch?v=9ivBwzO1wn4)がジョエル・コーエン監督に絶賛された新鋭フレディ・マクドナルドで、25歳の若さで、この長編映画をリリースする事になった。
 フォト
 スイスの山中にある小さな町。お針子のバーバラは唯一の肉親だった母を亡くし、譲り受けた“喋る刺繍”のお店は破綻寸前。しかし、相談できる人は誰もいなかった。
 ある日、常連客との約束に遅刻した上に、ミスをして激怒させてしまう。フォローアップの為に店に戻る途中、バーバラは麻薬取引が決裂した現場に遭遇――2人の男たちは血まみれで倒れ、拳銃と大金の入ったと思しきトランクがあった。
 「完全犯罪」「通報」「直進(見て見ぬふり)」の三つの選択肢が頭をよぎったバーバラの決断は……
 
 本作の原点である短編映画は、前述した状況での「完全犯罪」の選択を描いたが、本作は、その“先”を描くと共に、別の選択肢を提示し、それらについても、異なる選択による“行動”とその“先”を描いている。
 3つの異なる物語を描き、その中で、バーバラがお針子ならではの針と糸を巧みに使って難題をクリアする、その仕掛けが見せ場となると共に、人物像を違った角度から描く事で、ドラマを掘り下げて行く工夫も見逃せない。
 ドラマの根底にあるのは、親の支配下にある子供であり、“店”と言う生き方に縛り付け、縫い付ける象徴としての針と糸、と見ると物語は変わって見えるように思う。

 だが、オリジナルの短編では露呈しなかった問題は、この長編で露わになった感じだ。問題を打開するのに針と糸を使う、と言う縛りが設定と展開に無理を生んでいるし、登場人物は主人公のバーバラ含め、性格が極端で感情移入を阻む。ドラマの方も、“三つの選択”の繰り返しが煩雑な上に展開も冗長に感じるし、映画の倫理としても、あり得ないオチをつけてしまっている――本作は、(ネタバレになってしまうが)3つの選択の先に、もうひとつの物語をつけて、強引なハッピーエンドにしてしまうのだが、本来ならば「完全犯罪(犯罪に加担)」、「直進(悪事に目を瞑る)」の選択で、それが両方とも好ましくないのだ、と示したうえで、「成すべき事をする」と言う選択に導く、とすべきだろう――まぁ、そうした伝統的な倫理観を踏襲しない、と言うのが若さなのかも知れないが、気になった所だ。

 いずれにせよ、撮影時23歳で、これを撮った、と言うのには驚くしかない。
 映画界の新星、フレディ・マクドナルドの次回作に期待したい。
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