mixiユーザー(id:124952)

2025年12月26日08:15

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「ジュリーは沈黙したままで」感想

 これは、ベルギーの新鋭レオナルド・ヴァン・デイル監督による長編デビュー作。
 主演は、実生活でも若手テニス選手であるテッサ・ヴァン・デン・ブルック。
 本作には、ベルギーの巨匠ダルデンヌ兄弟が共同プロデューサーとして名を連ね、この物語に共感を示した大坂なおみ選手もエグゼクティブ・プロデューサーとして参加している。

 ベルギーの名門テニスクラブに所属する15歳のジュリーは、将来を期待される有望選手。
 だが、ジュリーが信頼していた担当コーチのジェレミーが指導停止となり、突如クラブから姿を消す――周囲では、彼の担当するアリーヌの自殺を巡り、不穏な噂が立ち始めていた。
 原因解明の為、クラブはジェレミーについてのヒアリングが行うが、ジュリーは、なぜかジェレミーに関する調査には沈黙を続けるのだった……

 この映画、コーチのジェレミーがアリーヌに何かをしたのかを、ミステリーとして解き明かすようなものではない。
 映画が描こうとするのは、ジュリーが何故沈黙しているかであり、実際にテニス選手であるヴァン・デン・ブルックが、作中でも見せる他の練習生とは段違いのパフォーマンスによって、トップアスリートの住む世界の異様さを描いていくのだ。

 映画に登場するような名門スポーツクラブは、スカウトして来た有望選手を特待生として優遇して育成する一方、トッププロに憧れる裕福な家の子女を集め、そこから高額の会費と寄付金を得て運営されている。
 ジュリーはプロデビューが有望な特待生で、恐らくアリーヌはそうではなかったのだろう……そうして、夢破れた多くの犠牲の上に、トップアスリートは立っているのだし、15歳と言う年齢で、そんな残酷な現実に直面させられるのだ。
 更に、そんな現実を容認するクラブの下で、ジェレミーも意識してるかどうかは不明だが、そのハラスメント性質を露わにして行く――直接指導出来なくともジュリーを支配し、それでいて、過度な接触にジュリーが抵抗すると「止めろと言われたから止めただろ」と言って釘を刺す……特待生のジュリーだから「NO」と言えても、そうでなかったら……とぞっとするやり取りだ。
 
 このような環境下では、人は思う事が言えなくなる……被害者は勿論、特待生のジュリーには、ひょっとしたら自分は加害者側なのかも、と言う想いもあるだろうから尚更だろう。映画は、そんなジュリーの心境の変化を丁寧に追って行く……そして、ジュリーを演じるのが本物のアスリートである事は、この映画が描く事が、現実と地続きにある事を示しているように思えた。
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