これは、「アクト・オブ・キリング」のジョシュア・オッペンハイマー監督、初の長編劇映画。
出演は「ザ・ルーム・ネクスト・ドア」のティルダ・スウィントン、「1917 命をかけた伝令」のジョージ・マッケイ、「ザ・バイクライダーズ」のマイケル・シャノン。
環境破壊により、地表で人類が居住不可能となって25年……豪華な地下シェルターで暮らす富裕層の家族と使用人たちのもとに、ある日、外の世界から一人の若い女性がやって来る。
これをきっかけに、家族の日常が静かに崩れ始めて……
この映画、ジョシュア・オッペンハイマー監督初の劇映画で、それがなんとカタストロフィー後の近未来の地球を描くSFで、しかもミュージカルだと言う……大胆と言うか無謀な挑戦に興味を抱いて観たのだが、これは正直失敗だ、と思う。
まず、ミュージカルとして出来が悪い事――ミュージカル映画の歌唱には、主人公の心の動きを歌い、それを音楽に乗せる事で感情を動かし、物語を加速させる役割を担うものなのだが、それがまるで出来ておらず、ただ台詞を歌詞に入れ込んだだけで、感情も物語も動かすには至らず、何の為のミュージカル?と言う疑問さえ覚えてしまった。
そして、それ以上に問題なのは、この魅力的な設定を、まるで活かせていない物語……全体的に冗長で散漫、抑揚に欠ける脚本なのだが、問題なのは終盤、若いふたりの感情的クライシスを描いておいて、次のカットが赤ん坊を抱えた家族団らんになる、と言うのは、全く理解出来ない……その、バッサリ切られた部分にこそ、ドラマがあるのではないか、と……
ドキュメンタリー作家は、現実に立脚するが故に“物語”を作り込まない、と言われる――彼らが見せるものは“現実”なのだと言う相互理解が観客との間に成立しているからだ――だが、劇映画の世界に踏み込んだら、同じようには行かない、と言う落とし穴に、オッペンハイマー監督も見事にはまり込んでしまったように思う。
映画は、豪華で実力あるキャストは勿論、背景美術なども上出来の部類に入るだけに、何とも勿体ない感じの映画だった。
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