これは、「ヤングアニマル」誌に長期に渡り連載された武田一義の同題漫画を長編アニメ映画化したもの。
監督は、アニメ演出家の久慈悟郎で、本作が初の監督作品で、それが劇場版長編、と言う大抜擢。
出演は、「ミート・ザ・ワールド」の板垣李光人、「ラストマイル」の中村倫也。
太平洋戦争末期の昭和19年、南国・パラオ諸島のひとつ、ペリリュー島。21歳の田丸均は、陸軍一等兵としてそこにいた。
漫画家志望だった田丸は、隊長から、その才能を買われ、戦没者の最期の勇姿を遺族に向けて書き残す“功績係”という任務を与えられる。
9月15日、4万人の米軍によるペリリュー島上陸が始まる。対する日本軍は1万人。初日は、同期で射撃の名手の吉敷佳助上等兵と共に、浜辺で米軍を迎え撃った田丸だが、部隊は甚大な損害を受け、やがて地下壕に籠って持久戦をするよう命じられる。
それから2年、田丸は生き残った僅かな兵士と共に、米軍の物資を盗み、生き延びていたが……
このアニメ……原作漫画も同様なのですが、3頭身の柔らかな描線で描かれたほのぼのとしたキャラクターでリアルな戦争を描くもの。この絵柄から内容を想像するのはかなり難しく、これは本格的な戦争映画であり、PG12どころかR18でもおかしくないような苛烈で残酷な描写のあるものとなっている。
原作の武田一義は、ペリリュー戦の生存者の関係者ではなく、本作を描くまでは戦史にも詳しくなかった、と言う事だが、関係者の協力や、丁寧な調査から、リアルな戦場を描いており、これは高く評価出来るものと思う。
原作は全11巻+外伝4巻、と言う長大なものだが、脚本に武田一義自身が加わっている事もあり、ダイジェスト感のない見事なバランスで1本の映画にまとめているのもいい。
描かれる物語は、実際のペリリュー戦史に基づきながらも、登場人物の殆ど全てが架空の人物であり、ドラマもまた多くが創作となる……だが、そこに描かれるのは、“戦争”と言うものの本質なのだ。本作はまず、“功績係”と言う任務によって、戦争の虚栄を引き剥がし、その現実を描いた上で、戦場で生き、呆気なく死ぬ、空しくも愚かな人々の行いを描いて行くのだ。
好感が持てるのは、この映画、悪人をひとりも出さない事――利己的な人物には、そうなる理由があり、冷酷な人物も、人間らしさを見せる……その一方で、尊敬されるリーダーが最も頑なで愚かだった、となるのは皮肉だし、主人公を窮地に追い込む裏切りが、一途な愛の結果だった、と言うのには感情の持って行き場に困る……だが、それが人間だ、と描く本作には、ほのぼのとした絵柄に似合わない、鋭い人間性への視点が伺える。
気になったのは、この映画、あちこちに既視感がある事……3頭身のほのぼのキャラクターに対し、風景や兵器の描写はリアルで、時に生物たちの営みを描くのは「この世界の片隅に」を思わせるし、生存者たちが持久戦から、米軍物資を盗んで暮らし始める、と言うのはまるで「木の上の軍隊」のよう……勿論、原作漫画も同様なのだから仕方なくもあるのだが、もう少し、この映画ならでは、と言う部分が欲しかったように感じた。
ペリリュー島では、10900名の日本軍兵士・軍属が戦い、玉砕をせず、持久に転じて34名が生き残った。攻める側の米軍も4万を超える投入兵力のうち、1万人以上が死傷した、と言われる。そして、やりきれないのは。この戦いが、戦局に何の影響をも及ぼしていない事にある……“功績係”の田丸は、どのように、その功績を語るのだろうか?
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