これは、ルイス・キャロルの名作「不思議の国のアリス」を日本で初めて劇場アニメーション化したもの。
出演は、「すずめの戸締まり」の原菜乃華、「はたらく細胞」のマイカ・ピュ。監督は、TVアニメ「白い砂のアクアトープ」の篠原俊哉。
就職活動で躓き、この先の進路を見失っていた大学生の安曇野りせは、亡き祖母が遺した、「不思議の国のアリス」の世界を体験出来ると言うテーマパーク「ワンダーランド」の試験公開に招待される。
英国風の邸宅の一室で、VRゴーグルを装着したりせの前に現れたのは、執事の衣装をまとった白ウサギ。その後を追って、穴に飛び込んだりせは、そこでアリスと出会って……
この映画だが、「不思議の国のアリス」のアニメ化ではなく、その設定を借りたオリジナル作品、と言うのが妥当な所だろう。
アニメ制作は、「SHIROBAKO」のP.A.WORKSだからアニメとしての完成度はかなり高いし、「不思議の国」もファンタジックかつ美しく描かれている……だが、褒められるのはここまでだ。
この映画で、物語を現代風にアレンジすべく盛り込まれた内容、これらが尽くダメだ、と思う――物語は、主人公である情報に溢れる現代で自分を見失った大学生のりさの自分探しであり、不思議の国の奇妙な住人たちは、そんなりさの価値観を揺さぶり、思い込みを壊し、最後にはこれまでの自我を破壊して、“本当”の自分を取り戻す、と言う、まるで自己啓発セミナーのようなもの。
自分を見失い、SNS上に築いたイメージだけになってしまったりさが怪物と化してしまうとか、その後、自我を壊されて不可視の存在になってしまうとか、アニメらしいと言えばそうなのだが、あまりに直接的な描写は陳腐だし、そこに新たな人格を書き込まれてハッピーエンド、となるのも薄気味悪く思える。
そんな内容に加え、テンポの悪い語り口と、面白みに欠ける演出のせいで、中盤以降、すっかり退屈してしまい、眠気さえ覚えてしまった。
こんな物語にするくらいだったら、オリジナルを忠実にアニメ化した方がよかったのではないだろうか、と思ってしまった。
主演の原菜乃華は、「すずめの戸締まり」での声優主演経験があるのに巧さを感じず、むしろマイカ・ピュの方が自然に感じられたくらいだし、他の俳優キャストも、どうにもらしさを感じなかった。
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