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2025年09月08日23:46

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「ふつうの子ども」感想

 これは、「そこのみにて光輝く」、「きみはいい子」の監督・呉美保×脚本・高田亮のコンビによる、子供同士の世界を見つめたヒューマンドラマ。
 主役の3人の子供たちを嶋田鉄太、瑠璃、味元耀大が演じ、大人側キャストも、蒼井優、瀧内公美、風間俊介となかなか豪華。
 フォト
 小学4年生の上田唯士は、生き物が好きなふつうの男子。唯士は、同じクラスで、作文の発表で毅然とした表情を見せた三宅心愛が気になっている。
 環境問題に高い意識を持ち、大人にも臆せず声を挙げる心愛に何とか近づこうとする唯士だが、そこに、いたずら好きな橋本陽斗が割って入って来て、心愛に「何かやろう」とけしかける。心愛も行動力のある陽斗に共鳴、唯士も負けじと張り合ううちに、3人が始めた“環境活動”は、思わぬ方向に転がり出して――

 これは面白かった。
 ヒロインとなる心愛は、グレタ・トゥーンベリ+重信房子、と言う設定だ、と言う――グレタ・トゥーンベリは、理解ある両親と共に孤独な戦いを始めたが、心愛は、無理解な親に反発し、同世代の仲間と動き始める、と言うのが差異となる。そして、物語は、心愛が、陽斗が見つけて来た“アジト”で徐々に行動を過激化させて行く、と言うのを、あたかも連合赤軍が山岳アジトで暴走して行くかのように描いて行くのだ。
 映画として面白いのは、主人公はそんな心愛ではなく、彼女を好きな唯士であり、この唯士と言うのが、その場の事しか考えない、いい加減なお調子者(つまり、“ふつうの子ども”なのだ)として描かれている事……そんな唯士が、行動力があり、心愛にも好かれている(と、唯士には見える)陽斗と張り合っているうちに、彼ら子供らに手に負えない事態を招いてしまう事になる。
 この映画をまとめてしまえば、信念のある女と、バカな男の話で、男には女の信念も、その怒りも理解出来ない、と言う、普遍的な悲劇を描く……のだが、これを10歳の子供の物語とする事で、観客との距離を取った映画は、コメディとして観られるものになってしまうのだ。
 ただ、この映画がちゃんとしているのは、出来事を絵空事で終わらせず、ちゃんと現実に着地させている事で、それ故に最後には、学校と親を巻き込んで、責任を問われる所まで描く――この親を巻き込んでのシーンが、唯士、心愛、陽斗で三人三様となっているのが面白く、そして、そこで判るのは大人もまた“大きな子供”でしかないと見せるのは見事と言うしかない。

 3人の子供たちの中では、やはり、唯士役の嶋田鉄太がいい。いかにもな子役然とした様子がなく、リアルな10歳児に見えるのが凄い。
 大人側としては、母親の顔が様になって来た蒼井優はやはり上手いが、その一方で、まるで母親には見えない瀧内公美の存在感は抜群だ。彼女演じる母親と対峙するシーンでは、子役らに台本は見せていない、と言うのだが、子供相手に大人口調で問い詰めるアレは相当怖かったのではないだろうか。

 映画の最後、10歳男子らしく、けろっと現実に戻る唯士に、心愛はグレタの言葉を引用して「How dare you……」と言うのだけど、唯士はきょとんとして意味が判らない……“ふつうの子ども”とはこんなもんだ、と言う着地点もよかった。
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