これは、魚豊による漫画作品で、「恋と陰謀」をテーマとする異色の人間ドラマ。
非正規社員の青年、渡辺は自分の居場所がない、と感じていた。
そこで、思い切って自己啓発セミナーに参加してみるが、そこでも“カモ”にされるだけの自分を思い知る。
そんな渡辺は、大学生の飯山栞に出会い、恋に落ちて……
これは面白い。魚豊は、前作「チ。−地球の運動についてー」でも、「社会で受け入れられていないものに熱中する人々」を描いているが、本作では、同様だが方向が正反対の「陰謀論」に熱中する人間の、その心理的なメカニズムを解き明かしつつ描いていく。
それにしても、人間社会には陰謀論が必要だ、と言う事を、あそこまで明確に、残酷に描けるなんて――これは本当に大したものだ、と思う。
ヤドカリは、身の丈にあった貝殻に入る。
同様に、人間もその知的レベルの身の丈にあった「理解」しか出来ない……もし「世界」が、その「理解」に及ばないほど、大きく、複雑だったら……?
その時には、身の丈に合うまで、「世界」を切り詰めるしかない。その、身の丈に合せて、「世界」を切り詰めるのに使う「道具」が、陰謀論」なのだ。
だから、そんな人に「間違っている」と言っても通じない……そもそも、そうしなれば理解出来ないのだから……
作者は、そんな、知的な”身の丈”しか持ち合わせない人に残酷に言う、
「それはキミのあたまが悪いから、だ」
これは、そんな残酷な間での「格差」を描く話でもあるし、同時に「信仰」と言うものが如何にして生まれるかを描くものでもあるだろう。
この漫画は、全4巻と短く、青年と恋愛を描く青春ドラマであると共に、様々な深読みが出来るものだと思う。
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