これは、「サンダーボルツ*」のフローレンス・ピューと、「アメイジング・スパイダーマン」シリーズのアンドリュー・ガーフィールド主演のラブストーリー。
監督は「ブルックリン」のジョン・クローリー。
妻から離婚を切り出され、絶望のどん底にいたトビアスは、交通事故に遭い、彼を撥ねたドライバーのアルムートに出会う。
アルムートは新進気鋭のシェフで、行動的で、自由気ままに暮らしており、何事にも慎重で、消極的なトビアスとの接点はまるでなかったのだが、不幸な出会いがふたりを結び付け、恋に落ち、娘が生まれて家族となる。
だが、アルムートがかつて患ったガンが再発、余命僅かだと知らされる――そんなアルムートは、料理コンテストの代表指名を受けており、また、トビアスとの結婚式の準備もあった……そこで、アルムートはある決断をする……
この映画、書き出した粗筋だけ見ると、難病もののメロドラマに思えるが、映画の印象は大分異なる。
本作は、時間軸をリニアに置かず、ふたりの出会いから終焉までのエピソードを、時間軸を敢えて錯綜させて描いている――そんな2人の物語は、3つの時代とエピソードになるだろう・ひとつめが出会い、ふたつめが子宮がんを克服しての出産、みっつめががんの再発と料理コンテストとなるのだが、映画は、そんな3つの物語を解体し、バラバラに並べ替える。
そして、トビアスの別れの悲しみは、直後に描かれるアルムートとの幸せな家族生活と対比されて相殺され、ガンの再発の不安も、過去の克服のシーンと並べられて均されてしまう。
勿論、終盤はアルムートの晩年になるのだが、その病との戦いは、料理コンテストへの挑戦と並べられ、進行する病は、コンテストを勝ち抜いて行く事で相殺されるのだ。
だが、物語は最後に思わぬ着地点に辿り着く……あれほど熱意を燃やしていた料理コンテストの勝者発表と表彰を前に、アルムートは家族と共に会場を抜け出し、ある場所へ向かう――そして彼女は、病の不安も、絶望もなかった童心に戻り、家族と(恐らくは最後の)平穏な時を過ごすのだ。
そこで気づく、これは家族の記憶の物語であり、喪失の悲しみを乗り越えた後で振り返る、彼らが生きた“記憶”を描いているのだろう。
この映画は、そんな“記憶”を物語として語る為に、敢えて「難病もの」となる事を拒絶し、この特異なスタイルに辿りついた……そう思えた。
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