これは、バチカン市国のシスティーナ礼拝堂で行われる教皇選挙“コンクラーベ”の実態を描いたイギリス人作家ロバート・ハリスの同題小説を、「裏切りのサーカス」のピーター・ストローハンが脚色、アカデミー賞受賞作・「西部戦線異状なし」のエドワード・ベルガーが監督して作り上げた重厚なドラマ。
出演はレイフ・ファインズ、スタンリー・トゥッチ、ジョン・リスゴー、イザベラ・ロッセリーニと名優が顔を揃えた。
世界14億人の信徒を有するキリスト教最大教派・カトリック教会……その最高指導者にして、バチカン市国の元首・ローマ教皇が崩御された。悲しみに暮れる暇もなく、ローレンス首席枢機卿は新教皇を決める教皇選挙“コンクラーベ”を取り仕切ることになる。
程なくバチカンには世界各地から100人以上の枢機卿が集まってくる。枢機卿らは次期教皇の候補であると共に、投票権もまた枢機卿にしか与えられていない。
そして、外部から一切の情報を遮断されたシスティーナ礼拝堂の閉ざされた大広間でコンクラーベが始まる……だが、票は割れ、更に、多数派工作にスキャンダルの暴露による足の引っ張り合い、陰謀作術が渦巻く中“ある事件”が起きて……
これは面白い。コンクラーベ、と言う言葉は知っていたが、その実態は知る由もなかったのだが、これは、そうしたキリスト教の知識なくとも、ポリティカル・サスペンスとしても第一級、選択に苦悩する人間ドラマとしても見応えがある。そして、勿論、内実を知っていれば更に興味も引かれるものだろう。
実際、カトリック教会は様々な汚職やスキャンダルで危機に瀕し、それを現在の革新的教皇が思い切った改革を進めている最中であり、映画内では、そんな現教皇をモデルにしたと思しき革新的教皇が亡くなった後、改革を進めるのか、或いは保守に戻るのか、と言う対立の中で揺れる選択を描く……そして、これはカトリック教会の中だけでなく、現実の世界のあちこちで起きている事だ、と思い知った時、この映画が描く“選択”の重さが理解できるだろう。
しかも、映画は、その対立の果てに、新たな選択肢を指し示しさえする――しかも、それが、ローレンスの最初の説教に結び付いて、腹落ちする辺りも見事としか言いようがない。
そんな現実社会にも繋がりを持たせた物語、それを確かに描く脚本にも隙がなく、実際のバチカンでの撮影と、礼拝堂の中などセット撮影の部分の差異も少なく、雰囲気は本格的かつ重厚……名優競演による演技、その存在感も抜群で、さらに、映画演出として印象的だったのは、音声が、台詞だけでなく息遣いも拾っている事で、その息遣いにも語らせる演出が生み出す臨場感といったら……これは本当に見事な映画であり、観終えて思うのは、これがアカデミー賞の作品賞を獲れなかった事が本当に不思議でならない。
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