これは、「モガディシュ 脱出までの14日間」のリュ・スンワンが監督、2023年の青龍映画賞では最優秀作品賞等4冠に輝いた注目作。実話から着想を得たクライムアクション。
出演は「国家が破産する日」のキム・ヘス、「明日へ」のヨム・ジョンア、「モガディシュ 脱出までの14日間」のチョ・インソンなど。
1970年代半ばの韓国。化学工場の排水により海が汚染され、クンチョンの漁民は窮地に陥っていた。軍事独裁の政府は市民の声を聞かず、生き延びる為に海女のリーダーのジンスクは、密輸業者を手伝い、入港前に海に落とされた荷を引き上げる仕事を請け負う事になる。
しかし、作業中に税関の摘発に遭い、ジンスクは刑務所に送られ、親友チュンジャは現場から逃亡した――2年後、チュンジャは再びクンチョンに現れた。彼女は、ソウルで凶悪な密輸王のクォンに弱みを握られ、クンチョンでの海女を使った密輸業を斡旋する事になったのだ。
ケンチョンに乗り込んだクォンに、漁民から食い詰めてチンピラとなったドリ、税関のジャンチュン係長ら、様々な思惑が交錯する中、ジンスクは人生の再起を懸け、チュンジャの誘いに乗って大勝負に出るが……
これは、海女と女詐欺師が手を組み、ベトナム帰還兵の密輸業者、権力を笠に着る悪辣な税関官吏、街のチンピラに。人食いサメまで交えてのバトルロワイヤル……と言う、無茶苦茶な映画。
そんな映画の中心となるのは、生真面目な海女のリーダー・ジンスクと、2年前の事件後は詐欺師となったチュンジャの友情と連帯で、このシスターフッドをキム・ヘスとヨム・ジョンアのふたりのベテラン女優が演じている。
しかし、、キム・ヘスは53歳、ヨム・ジョンアも51歳なのに、どう見ても30代と言う美魔女っぷりも凄いのだが、この年齢で水中アクションまで演じた、と言うのも凄い。また、これまでシリアスな映画での活躍が目立ったキム・ヘス(吉沢明歩似!)が変顔も辞さずに、胡散臭い詐欺師を演じているのも注目だろう。
’70年代の韓国歌謡曲が多用され、ファッションは過剰にサイケデリック……当時のファッショントレンドに田舎臭さを敢えて加え、ダサくてケバいビジュアルは、正に’70年代娯楽映画のノリで、言うなれば、’70年代の東映娯楽映画の風。これは「そういうものだ」と思って観ると、相当に楽しい映画だと思う。
その一方、描写にエグさや残酷さがなく、流血控えめ、肉体破壊もなし。ついでにエロもロマンスも控えめ……と、韓国映画を見慣れていると物足りなく思うかも……丁度、TV地上波で流せる程度のクライムサスペンスを、騙し合いのコンゲームの面白さも含めて見せ、これは、従来の韓国映画とは一味違う出来栄えとなっていると思う。
公権力に暴力、それに銃と、様々な“力”で海女らを追い詰める男たちが、海中に入れば大逆転、と言う展開は痛快で、最後は、海女たちが勝つ、と言う予測のつくエンディングでも文句なし。
これは面白い。満足。
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