これは、安藤サクラ主演、武正晴監督の「百円の恋」を中国でリメイクしたボクシング映画。武正晴監督、足立紳など、「百円の恋」製作スタッフも監修として製作に加わっていると言う。
監督・主演を務めたのは、「こんにちは、私のお母さん」のジャー・リン。
32歳で無職。実家に引きこもるドゥ・ローインは、出戻りの妹と大喧嘩となり、衝動的に家を出て一人暮らしを始める。
ローインは勤め先で、偶然出会ったボクサーのハオ・クンと恋に落ち、これをきっかけに、ボクシングを始めることに。ところが、ある試合の前に、ローインはクンと衝突、その後、クンはボクシングを引退し、ローインの前から姿を消してしまう。
そんなローインに、更にショックな出来事が続き、何もかも失ったローインは、“一度、勝ってみたい”と、プロボクサーのライセンスを取って試合に出る、と決意し……
この映画ですが、「こんにちは、私のお母さん」で中国映画屈指の興行成績を叩き出した国民的コメディエンヌのジャー・リンが、1年近くも表舞台から消え、本作の発表の為、再び姿を見せた時には、別人のようにシェイプアップされていた事でも話題となった――実際、本作のポスターのジャー・リンは、まるで別人の印象……元80kgあった体重を本作の為に100kg超まで増量した後に、そこからボクサーとしての肉体を作り込みながら50kg以上減量した、と言うのだ……絶句。
また、オリジナルも“日本版「ロッキー」”と呼ばれたが、本作では、ローインの減量&トレーニングのシーンをロッキーのテーマをそのまま使う、と言う……この大胆さは、正に中国映画ならでは、だろう。
そんなジャー・リンの尋常ではない本作に懸ける熱意もあり、これは、面白い映画となっていた――正に、定説「ボクシング映画に駄作なし」の通り。
物語は、基本、「百円の恋」そのままで、オリジナルを再現したカットもある一方、恋物語と言う部分を後退させつつ、色々アレンジされていて、これはこれでよい、と思った。
試合中の回想シーンも、単なる繰り返しではなく、主人公の受けた本当の“痛み”と苦しみを描いて、「こんなパンチ、死にたくなるほど痛くない!」と立ち上がるモチベーションに変える……これは、泣ける。
あと、印象的だったのは、試合に臨むローインが、窓ガラスに映る姿に、かつての自分を幻視し、頷き合ってからリングに向かうシーン……負け続けたかつての自分を否定せず、その上で「人生は一度きり、やれば出来る」と言う本作のテーマを無言で語るものとなっていた。
クライマックスの試合シーンは、オリジナル同様、本物のプロボクサーとの勝負で、素人が半年かそこら鍛えただけでは、まるで歯が立たない、と言う、残酷な格闘技の現実を見せる一方、それでも「最後まで立っていられたら勝ち」と言う、自分だけの勝利条件を抱いて試合に臨むのも「ロッキー」だ。
ラストシーンは、恋愛要素が後退したが、これはこれで胸が熱くなるもの。見応えのある、いい映画だと思う。
PS
それにしても、ジャー・リンは、監督デビュー作の前作「こんにちわ、母さん」が公開年の世界興行収入2位、本作も史上屈指の成績を上げて、監督2作目で映画人としての頂点に立ってしまった感あり。
今後、どうするのだろう……出来れば、折角鍛えた肉体を活かし、アクション俳優に転じてウー・ジンとでも共演して欲しいものだが……
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