これは、男女の性の不平等に切り込んだ鳥飼茜の同題漫画を、「“かくれビッチ”やってました」の三木康一郎監督が実写化した人間ドラマ。
主演は奈緒。共演は、「HiHi Jets」のメンバー、猪狩蒼弥と、三吉彩花、風間俊介。
高校教師の原美鈴は、地味目で物静か。対照的に派手で快活な親友の渕野美奈子から、早藤雅巳と婚約したと告げられるが、その早藤は、美鈴をレイプし、その後も彼女を屈辱的な性のはけ口として来た男だった。そんな、誰にも言えない不平等な性の問題が、美鈴を鬱状態にまで追い込んでいた。
そんある日、美鈴の担任するクラスの男子生徒の新妻祐希からある性の悩みを打ち明けられ、思わず本音を漏らしてしまった事から、新妻は逆に美鈴に魅かれるようになって行き……
これは、男女の性行為の不平等さを描くもの。性の快楽が男女それぞれにあるとしても、現実的には体格や腕力で優位に立つ男性が優位になるし、社会的にも経済的・文化的さまざまな格差が、女性が、その性を一方的に搾取され、消費されている、と――そうした現実を踏まえ、これは、そうした問題を女性目線で描くものとなっている。
これは、男性にとって、いささか居心地悪く感じるものだろう。しかも、主人公の美鈴が、体力的にも性格的にも相手に強く出られるタイプではなく、だからこそ、その思いと感情は徹底的に弱者(この場合は女性)に偏る――「そのくらいのこと、許されるだろう」と言う男性の言い分に対し、「許すかどうかを決めるのはわたしたちの方」と返されるのには、自身、男性の傲慢さを痛感した部分だ。
映画は、そんな美鈴と、今時ありえないくらいに女性を蔑視し、暴力的に性を搾取する早藤との対峙をクライマックスに、この問題に苦悩する美鈴を描いていく。
レイプシーンを含む濡れ場も辞さず、性の生々しいドラマに挑んだ奈緒も挑戦的だが、これまで好人物の印象の強い風間俊介が、早藤を嫌らしく演じているのも大したものだ、と思う。
残念なのは、日本映画らしい諸事情によるものなのだろうが、カラミの際にもブラジャーを外さない違和感と、登場人物の背景描写の希薄さ。これでは、登場人物の行動原理が掴めず、全てが唐突に感じられるだけだ。
そして、最大の問題は、主演の奈緒が望んだ、インティマシー・コーディネーターを入れる事を三木監督が却下した事――撮影時に第三者を介在させたくない、問題の有無は自身で判断するからいい、と言うのは、正に作品中でも語られる強者である男性側の理屈であり、それを決めるのは、奈緒の側にある。監督が、それを理解していなかったとすれば、原作、そして脚本に書かれた女性の立場から見えるものを果たして理解していたものかどうか……映画を観た印象としても、正直、何を言いたいのか判らないものになっているのは、監督自身が問題の本質を理解していなかった証のように思えた。
ログインしてコメントを確認・投稿する