これは、「ドライブ・マイ・カー」の濱口竜介監督と音楽の石橋英子による共同企画作品。
第80回ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞受賞。
自然豊かな高原にある水挽町。その町で便利屋のような仕事をしている巧は娘の花と、静かで慎ましい生活を送っていた。
だが、そんな町に、グランピング場の建設計画が持ち込まれる。コロナ禍で経営難に陥った芸能事務所が政府からの補助金を得る為に計画した急造企画で、施設が町の水源に汚水を排水しようとしていることが判って、説明会は紛糾する――
これは、語るのが難しい映画だ。
濱口竜介監督らしい、丁寧に作られた映画で、主体となる会話劇を移動の中で行う事で映画としての動きをつけるのも巧み。
主演の巧を演じる大美賀均は、濱口監督のスタッフで、演技経験は殆どないそうだが、浜口作品への理解度はさすがで、期待される存在感をきっちり出している。
物語を動かして行くのは急造グランピング場建設なのだが、それを進めようとする会社の2人も決して悪人ではなく、途中の車内のシーンで、観客に感情移入を促し、事態を転回させるのも濱口監督らしい。
しかし、悪人はおらず、誰もがやるべき事をやっている、と思っているのに、この社会は、そして世界は、どうしてこうなってしまったのだろう?と言う疑問、そして、やるせない思いが、この映画のテーマとなるだろうか?
巧が口にする「バランスだ」と言う言葉と、そんな巧が最後にした事……それを受け止め、理解して、言葉にするには正直時間を要した。
その理解さえ、正しいかどうかは判らない。ただ、事態を破綻させず、バランスをとる為に「落とし前をつける」と言うのは、こうしたものなのかもしれない、とは思った。
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