これは、「そして、バトンは渡された」の瀬尾まいこの同題小説を、「ケイコ 目を澄ませて」の三宅唱監督が映画化したもの。「ケイコ 目を澄ませて」に続き、本作も16mmフィルムで撮影された。
主演は、NHKの連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」でも共演した松村北斗と上白石萌音。
藤沢さんはPMS(月経前症候群)を抱えており、生理前になると苛々し、些細な事で怒りの発作を止められなくなる。そんな藤沢さんは、ある日、いつもやる気がなさそうな同僚の山添くんに対し怒りを爆発させてしまう。
一方、山添くんは、パニック障害を抱え、心が思い通りにならず、様々なことを諦めて気力も失っていた。
少しずつ互いの事情を知り、職場の人たちの理解に支えられながら、二人は互いに助け合い、生きづらさに向き合うようになって行く……
恥ずかしながら、PMSと言う存在とその症状を本作で初めて知った――そう言えば、と思い当たる経験が幾度か……
映画は、このPMSとパニック症候群、と言うそれぞれ病を抱えた男女ふたりの再生と友情の物語で、これを恋愛ものに仕立てなかったのは、これは英断と言っていいだろう。だからこそ、ふたりが向き合うのではなく、横に並んで別の方向を見ながらも、互いに支え合っていく、と言うこの映画ならではのスタイルが出来上がったのだから。
映画としては、悪い人が誰ひとりとして出てこない、優しい作風――これは、まるで、実生活でも嫌われる事がないと言う、上白石萌音の纏う空気感そのもの。はしゃがず、飾らず、丁寧な作りには好感が持てる。
あと、山添くんの彼女で、所謂、“勝ち組エリート”な女性役を芋生悠が演じているのだが、彼女持ち前の薄幸な感じが出てしまい(映画の雰囲気には合っているのだけど)、これは、上白石萌音と対照的な女優の方がよかったかなぁ、と。
映画は、2人の抱える問題の解決までは描かず、問題と共に生きる様を描く。
夜は夜明け前が最も暗く、そして寒いと言う……そんな時でも、共に夜空を見上げる人が傍らにいるのならば、と言うこの映画……熱いドラマも、殊更な感動もないけれど、心がじんわりと温かくなるような映画だ。
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