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2023年09月24日22:38

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「熊は、いない」感想

 これは、「人生タクシー」のジャファル・パナヒ監督の新作で、ヴェネチア国際映画祭では審査員特別賞を受賞。
 実は、ジャファル・パナヒ監督は、2010年以降、イラン政府により映画製作と出国を禁じられているのだが、本作は、そんな監督の映画製作の実態の一端を垣間見せるものともなっている。

 イランのトルコ国境付近の小さな村に滞在するジャファル・パナヒ監督は、リモートでトルコで撮影を進める助監督のレザに指示を出して映画を製作中――トルコから、更に欧州へ逃亡しようとしているイラン人男女の姿をドキュメンタリードラマ映画として撮影しているのだ。
 そんな中、滞在先の村では、古いしきたりにより愛し合うことが許されない恋人たちのトラブルに監督自身が巻き込まれて行き……

 この映画、ジャファル・パナヒ監督本人が主演……とは言え、これがドキュメンタリーではなく、二重三重に重なったメタフィクション構造となっているのが、如何にもパナヒ監督作品……と言うよりも、イラン映画らしい所だろうか。
 映画は、イラン政府の目を盗んで映画製作を続けるジャファル・パナヒ監督自身の姿を描き、その映画作りの一端を見せるだけでも興味深いのだが、古いしきたりの残る小さな村に、イランと言う国の抱える問題を重ね、更に、2組の愛し合う男女の姿から、そんなイランで生きる(または生きられない)と言う事を描く力技で、それを様々な制約の中で商業映画に仕立ててしまうのだから、これはもう言葉がない。先日、ジャファル・パナヒ監督のパナー・パナヒ監督の「君は行く先を知らない」を観たけれど、これは確かに格が違う。

 映画タイトルにある「熊」は、ジャファル・パナヒ監督が滞在する村に出没する、と言う熊の事で、村人は熊を恐れてひとりでは出歩かないと言う……だが、この熊は実はハリボテなのだ。
 ハリボテの熊を恐れて、ひとりでは行動しないことにより、相互監視によって村の秩序が保たれると言う――この“熊”に当たるのは、イスラム法か、イランの宗教警察か……イランの人々を縛り付け、苦しめているのは、そんなものによって守られた“古いしきたり”ではないのか?と言う映画テーマは実に挑戦的だ。
 これにより、ジャファル・パナヒ監督は拘束され、収監されてしまった、と言うのも、またありがちな事と思える。
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