これは、映画界を揺るがす事となった、2017年に告発されたハーヴェイ・ワイスタインによる性加害問題を背景に、映画業界の闇を描く社会派サスペンス。
「ジョンベネ殺害事件の謎」で知られるドキュメンタリー映画作家のキティ・グリーンが監督。主演は、Netflixのドラマ「オザークへようこそ」で三度にわたるエミー賞助演女優賞に輝いたジュリア・ガーナー。
本作は2019年に製作されているのだが、日本での公開は今年となってしまった。
映画プロデューサーという夢を抱くジェーンは、名門大学卒業後、映画会社に就職。業界では名の知れた名プロデューサーでもある会長のジュニア・アシスタントとして働いている。
そこは華やかさとは無縁の殺風景なオフィス。早朝から深夜まで平凡な事務作業に追われる毎日……。しかし、将来大きなチャンスを掴むためには、会社にしがみついてキャリアを積むしかない。
そんな日々の中、会長の許されない行為を知ったジェーンは、ひとつの決意をするが……。
これは、「#Me Too」出来なかった、多くの女性の物語――「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」は、性暴力に戦う女性たちを描いていたが、本作が描くのは、判っていても、「止められない、何も出来ない」と言う“現実”……もっとも、これが殆ど全てなのだ。宮仕えの辛さ。
それでも、ジェーンがは勇気を振り絞って、人事部のコンプライアンス担当に告発するも、あっさり揉み消されてしまう――コンプライアンス担当が「大丈夫だ、君は会長の好みじゃない」と宥めるのも大概だが、席に戻ると、同僚から上司にまで告発が筒抜けで、みなで懐柔にかかると言うのも恐ろしい……しかも、これが、数多くのリサーチからリアリティを持って作られた描写だ、と言うから尚更だ。そして、この問題に心を閉ざした事で、ジェーンもまた“共犯者”となる、やりきれない展開。
劇的な展開はなく、カタルシスもない、正に息が苦しくなるような87分……だが、これは作られた事だけでも意味がある映画だ。
ログインしてコメントを確認・投稿する