mixiユーザー(id:124952)

2022年12月11日23:46

74 view

土曜は……

 土曜は、午後、映画2本。
 
 まず、1本目は、ブルク13で、
 「夜、鳥たちが啼く」。

 これは、「アルプススタンドのはしの方」、「愛なのに」の城定秀夫監督の新作。
 原作は、「そこのみにて光輝く」、「オーバー・フェンス」の佐藤泰志が、郷里の函館ではなく関東近郊を舞台に描いた同題の短篇小説で、先の二作の映画化脚本を手掛けた高田亮が脚色している。

 十代のうちに小説家デビューするも、その後は鳴かず飛ばず、同棲していた恋人にも去られ、鬱屈していた慎一のもとに、以前の職場の先輩と離婚した妻の裕子が、幼い息子アキラを連れて引っ越してくる。
 慎一は仕事場にしていた物置で寝起きし、母屋を裕子とアキラが使う、と言う半同居生活。
 慎一は毎晩悶々とした想いを文章に綴り、裕子はアキラが眠りにつくと行きずりの相手を求めて夜の街へと出て行く……互いに距離を置く、そんな日々が続いていたが……

 これは、訳あり男女の不器用な触れ合いと、再スタートを描くドラマ。今回、予備知識なく観て、この味わい、何処かで……?と思ったら、エンドロールで、佐藤泰志の小説が原作と判って納得……
 傷ついた男女が、互いの傷を舐め合うように、関係を深めて行く物語はよくあるものだと思うし、そのきっかけが子供、と言うのも、「子はかすがい」とも言われるように、これまたよくあるもの。
 そうした凡百の内容を、そう思わせないのは話の上手さでもあるし、裕子が夜の街で行きずりの相手と交わす言葉を、発情期に夜鳴きする鳥の声に置き換えてしまうのも印象的。

 最後は、いささか甘口に感じた。如何に子供がふたりの間を埋めたとしても、慎一の嫉妬深くて粗暴な側面と、奔放で社交性の高い裕子では、いずれ破綻するのでは?と行く末が危ぶまれるが、とりあえず、生温くあっても、今が幸せならそれでいい、と言う関係性の容認と言うのは、いかにも佐藤泰志らしくあると共に、今の時代に求められるものなのかも知れない。


 2本目は、シネマジャック&ベティで、
 「天上の花」。

 これは、詩人・萩原朔太郎の娘、萩原葉子の小説「天上の花-三好達治抄-」を元に、「いぬむこいり」の片嶋一貴監督が映画化したもの。
 出演は「寝ても覚めても」の東出昌大、TVドラマ「雪女と蟹を食う」の入山法子。没後80年「萩原朔太郎大全2022」記念映画となる。

 昭和2年、萩原朔太郎を師と仰ぐ三好達治は、朔太郎の美貌の末妹・慶子と出会い、一目惚れをする。だが、未だ詩では食えない貧乏書生の達治に、結婚は許されず、失意の達治は、彼の詩集の愛読者でもあった智恵子と見合い結婚をするのだった……
 時は過ぎ、第二次大戦中の昭和17年、朔太郎は病死する。その4日後には慶子の夫が亡くなった――昭和19年。朔太郎三回忌で慶子と再会した達治は16年4ヶ月の思いを伝え、智恵子と離縁し、慶子と結婚する事になる。東京に空襲が迫る中、逃げるように越前三国に新居を構えた達治と慶子であったが……

 この映画、先日公開された「あちらにいる鬼」と似通った印象を受けた――何れも、登場人物に近い作者による小説を映画化したものになる――だが、あくまで「恋愛」に軸足を置いた「あちらにいる鬼」に対し、こちらは詩人・三好達治の愛と社会との関わりを描いて、表現者と言うものを描く普遍性を持つと共に、現代社会にも通じる、性格差の問題を、明治の男であり、軍人でもあった達治の男尊女卑思想の在り方を以て描くなど、見応えのあるものとなっている。
 達治は、繰り返し慶子を「愛している」と言うのだが、それは詩人として美しいものを愛し、言葉に置き換え続けて来た彼が追い求めていた、幻想の女性のシンボルを慶子に重ねていたに過ぎず、肉体を持つ慶子自身を愛していたのではない、と言う描写は様々な意味で強烈――しかし、映画は慶子を決して理想的には描かず、生々しい人間として描いている。映画の中で萩原朔太郎が慶子の事を「さもしく、面倒臭がり屋で、物事を表面的にしか見ない」と言っているが、それはつまり、彼女が普通の人間である、と言う事に他ならないのだ。
 だから、物語中盤以降、達治が慶子を殴るのは、自分の理想が現実と乖離する事に怒り、怯えての事であり、その暴力は自分にも跳ね返って来るものなのだ。
 そして、日本の敗戦が、達治の精神を打ちのめし、彼の理想を崩壊させてしまう……それを、生々しいセックスの描写で描くのは、これは脚本の荒井晴彦の本領発揮だろう。
 また、かなりの低予算映画と言う事ながら、それを感じさせないのもさすがだ。
 達治と慶子、ふたりの出会いを描いた後に、達治の失意を描くと一気に昭和19年に飛ぶ、と言う展開には面食らったが、これも限られた予算の中でドラマを語る技、と言うのにも唸らさせる、

 慶子を演じるのは入山法子。TVドラマでも雪女を演じているが、日陰の花、と言うか月下美人と言うか、美しくも冷ややかな佇まいがぴったりだ。
 また、三好達治を演じた東出昌大も素晴らしい。妻子を捨て、世間からも遠ざかる……と言う展開に最近の東出昌大の現状を重ねる人も少なくないと思うが、そんなプライベートの子細に関わらず、ここまでの演技を見せられれば、東出昌大がよく言われる“大根役者”との評は最早相応しくないものと思う。


 本作上映のシネマジャック&ベティでは、本作と、唐田えりかの「の方へ、流れる」を同時上映。
 不倫騒動で世間の批判を浴び(唐田えりかなど、そのせいで3年も表舞台から遠ざかっていた)、この2作についても不買運動のようなものがあると言うが、まったくいい加減にして欲しいものと思う。
 「東出昌大は妻と娘に支払う慰謝料をしっかり稼いで欲しい」などと言うコメントには何様のつもりか、とさえ思う。
1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2022年12月>
日 月 火 水 木 金 土
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

過去の日記

2026年
2025年
2024年
2023年
2022年
2021年
2020年
2019年
2018年
2017年
2016年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年