これは、現代の東京を舞台に、若者たちの物語が複雑に連鎖する群像劇。
監督は本作が長編デビュー作となる映像クリエイター、丸山健志。
東京。フードデリバリー配達員の羽田は、引退してしまった推しのアイドルを忘れる為、ペダルを漕ぎ続けている。シンガーソングライターを目指していた心は、大好きな人が去って行った事に絶望し、好きな事を全部止めると決めた。そんな心と別れた慎吾は、ノマド生活を送っている。慎吾が現在つき合っているモデルの夏美は、仕事よりパパ活が忙しくなってきた。コミュ力で世渡りして来たカメラマンの日室は、新進気鋭の広告クリエイター・黒須凜の仕事を受ける事になって大喜び。そんな日室の元に、彼の写真のファンだと言う女子高生の花がやって来る……
この映画、現在の――と言っても、コロナ禍以前のものだが――東京を群像劇の彼方に浮かび上がらせる、と言う狙いか……やろうとしている事も判るし、映像はスタイリッシュ。起用された俳優も個性的だ。
「ドライブ・マイ・カー」で注目の三浦透子は、ストリートミュージシャンとしての歌唱シーンを披露――彼女は「天気の子」の挿入歌を担当したシンガーでもある――、土村芳は、「本気のしるし」とは、また別の種類の面倒な女を演じている。他にもなかなかの存在感を見せる若手が揃っていて注目だ。
惜しいのは、いささか陳腐とも言える登場人物の心情を語るモノローグで綴られる物語が、大きなうねりを生んでいないことだと思う。確かに、それぞれの登場人物の抱える物語は、それなりに切実で、心に訴えるものがあるけれど、これは群像劇なのだ。それぞれのエピソードが結びつき、あるいは共鳴して、共通するテーマを浮かび上がらせるべきではないだろうか?
実際、フードデリバリーの羽田の物語は、これひとつだけでほぼ独立してしまっているのは気になったし、映画の所々で、別々に生きている登場人物が、同様の内容を語り、問題に直面する場面があるのだが、それぞれに結びつきがある訳でも、大きな物語が動き出す訳でもないのには肩透かしを食ったように感じる。全体的に、脚本の練り込み不足なのではないだろうか?
この出来では、群像劇とは言えないのではないか、と思う――例えは悪いかもしれないが、様々な動物の生態の記録映像のような感じがした。まぁ、それはそれで、おじさん世代にある自分からは縁遠い若者が生き様を捉えたものとして興味深くはあるけれど……
物語は最後にささやかな奇跡と、小さな幸福を描いて行く……綺麗にまとまってはいるけれど、そんな部分に、むしろ物語の旧態依然さを覚えてしまった。
ログインしてコメントを確認・投稿する