土曜は冷たい雨。
午後から出掛け、今日は映画2本。
まず1本目は、Kinoシネマみなとみらいで、
「博士と狂人」。
これは、世界最大の辞典「オックスフォード英語大辞典」誕生をめぐる実話を、メル・ギブソンとショーン・ペン共演で映画化したもの。
19世紀。独学で言語学博士となったジェームズ・マレーは、オックスフォード大学で、遅々として進まない英語辞典編纂を任される事になる。
マレーは言葉の収集を広く市民に求めると言う奇策により辞典編纂を加速させるが、その中で、大量の資料を送ってくる謎の協力者が現れる。 その人物は、精神を病んで錯乱の後に人を殺め、精神病院に収監されていたアメリカ人の元軍医ウィリアム・チェスター・マイナーだった……
この映画、「舟を編む」のような辞書作りの映画か、と思っているとちょっと違う。これは、戦争の後遺症により精神を病んだ男の、破滅と再生の物語に軸足を置いているのだ。
元々は、「博士と狂人」とあるように、2人を対比させて描く物語だったかも知れないが、ショーン・ペンの鬼気迫るような演技もあって、映画は大分、マイナー元軍医のエピソードに傾斜。その結果、映画としては、いささかバランスの悪いものになっているように感じる。
2本目は、ブルク13にて、
「スパイの妻」。
これは、日本のホラー映画の名手、黒沢清監督が、高橋一生と蒼井優のW主演で描くサスペンス。
今年度のヴェネチア国際映画祭にて、日本としては17年ぶりの銀獅子賞(監督賞)を受賞している。
1940年、太平洋戦争前夜の神戸。貿易会社を営む優作は満州で、ある国家機密を知り、彼の信じる正義のため、事の顛末を世に知らしめようとする。
だが、夫との愛が何より大事な妻の聡子は、そんな夫の隠し事に不義を疑い、真実を知って尚、二人の生活が危険にさらされると猛反対する。
一方、ひそかに聡子を思う旧知の津森は、軍の憲兵大尉となって神戸の分隊長に着任。福原夫妻への監視を強めていくのだった……
この映画、クラシカルな雰囲気のメロドラマ+サスペンス。
戦争に向かう時代のスパイもの、と言う事で、反戦的なテーマを持つのか、と見せつつ、実は、この映画にとっては、日本の戦争犯罪も、反戦もあまり重要ではない。
これは、夫婦と言う、元々他人のふたりが共に暮らす事で生まれるサスペンスを描くものなのだ。
物語としては、戦前の日本、と言う事で、男は仕事を家には持ち帰らず、そして、妻を、と言うか女を同格にあるものとは考えていない――これは、福原優作と言う男が、ではなく、その時代の日本としては、それが当たり前だったのだ。
そして、妻の聡子は、夫から本来は知るよしもない現実を突きつけられた事で、おかしくなっていく……夫と秘密を共有する為に、可愛がっていた甥を憲兵隊に売り、拷問させる事も厭わない辺り、これを狂気と言わずに何と言うのか。
だが、それも最後に聡子が述懐するように、そんな聡子は正常だ、とも言えるのだ。時代の方が、社会の方が狂っているのだから。
そんな物語を形にした演者として、高橋一生と蒼井優は文句なしだ。特に、蒼井優に関しては、あらためて凄みを感じた。
一方で、津森を演じた東出昌大はぼんやりした感じで、あまりハマり役と思えず……中村倫也が演じていたら面白かったんじゃないかな……
ログインしてコメントを確認・投稿する