水曜は、会社を定時で上がり、TOHOシネマズ海老名で、
「ミッドナイトスワン」。
これは、草��剛がトランスジェンダー役に挑んだドラマ。
この映画、近年、欧米ではトランスジェンダー役は、トランスジェンダーの俳優が演じるべき、と言う動きがあり、そうした動きの中で草��剛がトランスジェンダーを演じる事には、描写の不正確さもあって批判もある――実際、草��剛主演、と言う事で、劇場も一番大きな箱(630席)を宛がっているのだが、水曜のレディスデーと言うのに観客は30人足らず……確かに、今時、そうしたネット上の(観てもいない)批評が気になる人も多いのだろうとは思うが、それで観ない、と言うのは勿体ない事だと思う。
監督・脚本は、配信ドラマ「全裸監督」の内田英治。他の出演は、新人の服部樹咲、「喜劇 愛妻物語」の水川あさみ、「娼年」の真飛聖。
あ、今回、ネタバレしてるので、以下、要注意。
新宿のショーパブで働くトランスジェンダーの凪沙の元に、故郷の広島から親戚の中学生の少女、一果が預けられる事になる。
一果は、シングルマザーの母親にネグレクトされて育ち、愛情の受入れ方も判らない。寡黙で、自傷癖があり、突如暴力をふるう一果を、凪沙は厄介者扱いした。
そんな一果の心を捉えたのはバレエだった。凪沙にも言えず、密かにバイトしてバレエ教室に通う一果は、才能を開花させて行くが……
本作主演の草��剛は、憑依型と言われるそのままに、正になりきりの演技を見せている。元々、頬骨が高くて顔立ちに癖があり、しかも顔が大きい草��剛は、女性らしくあろうとするには無理があるけれど、それが正に、凪沙と言うトランスジェンダーを体現するものとなっているのだ。
一果を演じた服部樹咲の方は、これが初の映画。バレエダンサーとしては国際的な大会でも活躍しているだけに、その実力は確か。また、演技の方も、寡黙な役だけに微かな表情の変化を見せる難しい役なのだが、それを確かに形にしているのは大したものだ。伸びやかな、いかにもバレリーナらしい体型で大人びて見えたが、撮影時13歳、と言うのにも驚いた。
物語は映画オリジナルとなるが、これが映画の中の凪沙と一果同様に寡黙で不親切……ある程度の知識がないと、これは判らないのではないだろうか?。
その物語のベースになっているのは、やはり「白鳥の湖」。これを知っているのと知らないのでは、物語の理解度が大きく変わって来ると思う。
本作では、白鳥のオデットは凪沙、黒鳥――“悪魔の子”、オディールが一果に相当する。
まるでオディールのように、一果は、その美貌と才能で、触れるものから何かを奪って行く……バレエ教室に通う、東京で初めて出来た一果の友人であるりんは、バレエ講師のお気に入りの地位を一果に奪われ、足を壊して破滅して行くし、凪沙もまた、一果の踊りに心を奪われて彼女を愛するようになり、そして、彼女の母になろうとして破滅するのだ。
でも、そんな物語は終盤に感動的なフィナーレを迎える。
「海が見たい」と言う瀕死の凪沙の願いを叶える為に向かった浜辺で、一果が最後の踊りを見せる……凪沙の愛が一果を包み、母なる海に抱かれて、黒鳥の一果は、白鳥として生まれ変わる。
エピローグ、NYの街を凪沙の形見のトレンチコートを羽織って颯爽と劇場へ向かう一果は、正に凪沙がなろうとしてかなえられなかった存在そのものになっている。そんな自分を「見ていてね」と言う一果……愛される意味を知り、白鳥としてして羽ばたく一果が踊る「白鳥の湖」には涙する。
これは、トランスジェンダーと言う、今の自分ではない「何者かになりたい」と願う人たちの想いの果てを描く物語であり、悲しく、決してハッピーエンドではないかも知れないが、希望の光を見せる心打つ物語だと思う。
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