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2018年09月18日00:44

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「響 ーHIBIKI−」

 金曜日、「響 ーHIBIKI−」を観ました。
 これは、マンガ大賞2017受賞の柳本光晴のコミック「響 〜小説家になる方法」を、欅坂46の平手友梨奈主演で映画化したものです。
 共演は「パコと魔法の絵本」のアヤカ・ウィルソン。監督は「君の膵臓をたべたい」の月川翔。

 出版不況の文学界に天才少女、響が出現。圧倒的な才能を持つ響は、新人賞受賞のデビュー作が、史上初の芥川賞・直木賞のW受賞と言う快挙を果たし、様々な人々の価値観を変えて行く……

 これは自分としては珍しく原作コミックを読んでいて、それが実写となった映画。
 原作の絵からすると響を演じるならば数年前の橋本愛か小松奈菜など、すっきりシャープで目力のある子がいいのでは、と思い、丸顔でちょっと肉感的な平手友梨奈は、どうかな、と危惧していたのですが、これがなかなか悪くない。
 三白眼の刺すような目つき、低く無感情な喋り方と役作りもなかなかで、役を自分に引き寄せた感さえあります。これは平手友梨奈、大したものです。
 あと、この映画では、トレードマークの眼鏡を外してヒールに徹した野間口徹や、持ち味の躍動感溢れる溌剌さを封印した小栗旬など、俳優がその持ち味を敢えて抑えた挑戦的な役柄を演じているのも目立ちます。

 映画は原作の1〜6巻までをまとめたもので、原作通りにやるなら2時間の映画1本で実写化出来るのはせいぜい単行本2巻分、と言う常識からしても、そのままと言う訳には行かず原作コミックのエピソードとキャラクターを大胆にそぎ落としてまとめています。
 思い切ったのは花代子を出さないとしたことで、そうすると映画では花代子のやらかした事から始まるTV局襲撃編は出来なくなる訳で、その意味ではこれは本作で完結、続編は考えていない、と言うことでしょうか――平手友梨奈がよかったのでちょっと残念な気もしますが。
 また、柔らかな物腰ながら「女は才を見せることなく専業主婦として夫に尽くし子供を育てるのが最大の幸せ」と言う生き方を響に強いようとする涼太郎の“静かな狂気”も描かれる事がなかったのも気になります。

 結果として、物語は響とリカの、天才に嫉妬する秀才、と言う図式に加え、映画ならではの特色として、“努力の人”である山本春平にスポットを当てて響と彼を対比させ、最後に響が自死しようとする山本を止めると言うのをクライマックスにしています……ただ、そうするなら、テロップで良いので「山本春平。この翌年、5度目の芥川賞ノミネートで悲願の受賞」と入れて彼の物語に区切りをつける必要があるのでは、と思ってしまいました。(なにしろ、続編を作れない内容なので)
 むしろ、やはり凡人代表の花代子を登場させ、彼女が素直に響に憧れる様を見せることで、リカの立ち位置をはっきりさせ、絶交したリカと響の関係修復をクライマックスにした方が、青春学園ものの体裁をとる本作にはふさわしかったようにも思うのですが……

 響と言うのはとかく破天荒で、学校で先輩男子に”殺すぞ”と凄まれたらその小指をへし折る。
 友人が絡まれて困っているとみれば、絡んでいる相手が芥川賞作家だろうと構わず、その顔面を蹴る。
 自分の作品を読みもしないで否定した同期の新人作家を、新人賞授賞式の式場でパイプ椅子で殴り倒す――芥川・直木W受賞の本物のバケモノ、響の言語能力を以てすれば、罵倒するだけで相手に死にたくなるくらいのダメージを与えられそうなものですが、まぁ、好意的に見れば、響には己の才を人を傷つける為には使わない分別がある、と見ることも出来るでしょう(でも、響には分別ないしなぁ)――実際には、それを創作するにはハードルが高すぎる、と言う事でしょうけど。
 勿論、響がそうした行動に出るに至る、その理由は何れも真っ当なもので、彼女は自分らしいやり方で筋を通しているに過ぎません。それ故に、いかなる場合でも、どんな相手でも、我と我の真実を通す響の生き方は痛快さがあり、それがこの物語の魅力となっているのも事実。ただ、ちょっと惜しいのは、この映画では響の小説が人の心を動かし、その人生までも変えて行く、と言う描写がやや希薄なこと。
 屋上から転落しても無傷、警報機の鳴る踏切内に立ち止まっても電車の方が止まる、など説明がされない響の強運――まさに、天がその才を与えたもの故の強運なのでしょうが――を含め、映画の描写では、響と言う怪物が暴れまわる、一種の怪獣映画と受け止められられる可能性がありそうです。
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