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2026年10月21日00:03

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「DIGGER/ディガー」感想

 これは、トム・クルーズが「レヴェナント:蘇えりし者」のアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督と共に作り出した“規格外の大惨事”コメディ。
 共演は、リズ・アーメッド、ジョン・グッドマン、ザンドラ・ヒュラー、ジェシー・プレモンスと、これまた個性的な面々が揃った。
 
フォト


 巨大石油採掘会社のCEOディガー・ロックウェル。利益第一主義の強欲な男が大事にするのは高齢の愛猫のみ。
 ある日、グリーンランドの鉱区で緊急事態が発生するが、ディガーは全く意に介さずに操業を継続させ、大事故を引き起こしてしまう――その後、事態はさらに悪化、欧州を壊滅させる制御不能な大災害に発展する可能性が示される……想定される被害総額“18兆ドル”と告げられたアメリカ大統領ら政府要人は責任をディガーに押し付けるが、彼は「自然は操れないが 世間は操れる」、「事実なんでどうでもいい 語り方次第さ」と不穏な言葉を吐いて、何と、迫り来る危機を隠蔽する事にして……

 この映画の主人公、ディガーと言う男は、頭髪が薄くなり体も弛んだ老人。トム・クルーズは持ち前の“若々しいハンサム”をかなぐり捨てて演じている。この特殊メイクは、ゲイリー・オールドマンをチャーチルに変身させたカズ・ヒロで、またしてもオスカーものの仕事ぶりだろう。
 特筆すべきは、大統領役のジョン・グッドマンで、まるで別人のように細くなっており、役同様に病気なのでは?と心配になったくらいだった。

 映画は、“大惨事”を描くが、予告編から期待されるように、ディガーが“世界を救う”と言う事はない――トム・クルーズだから、と言って常に「世界を救う」訳ではないのだ――ディガーは、大惨事の引き金を引いてしまいながらも、損益を出すのを嫌がり、責任から逃れようとする、ケチな小者っぷりを剥き出しにする。
 この人物像は、さしずめドナルド・トランプ+イーロン・マスク、と言う所だろうか?大統領を始めとするアメリカ政府首脳らも、政界トップの大統領と、財界トップのディガーに忖度し、追従笑いを浮かべるだけの無能揃い、と言うのも、現在のアメリカ政府首脳部を、悪意を以てカリカチュアライズしたものと言えるだろう。

 圧巻なのは、欧州が壊滅的被害を受けた後の公聴会に登場したディガーの徹底的な開き直りだ。ディガーは言う。
 「オレが悪いんじゃない。便利な暮らしをリーズナブルに実現する為、安い石油を欲しがったお前たちが悪い。オレはそれに応えただけだ」
 ここに至って、映画は観客をも、作品世界に引きずり込みにかかるのだ。

 あと、ネタバレになってしまうので詳しくは避けるが、本作にはある仕掛けがある……これが明らかになった時にはびっくりしたし、映画の作りとしては面白いのだけど、何しろ、本作は劇中の災害対応とディガーと言う人物のインパクトが大きく、この仕掛けがあまり上手く機能していないようにも感じた。

 この映画は、迫りくる気象変動と、頻発する戦乱とエネルギー危機に直面しつつも、解決の動きを見せない現代社会を風刺する寓話、と言う事になるだろうか?
 だが、描写があまりに生々しく、尚且つ、引き込まれる内容であるが故に、自分事として受け止めてしまう事が、本作を笑えないコメディにしているように思う。
 自分自身、環境に関わる仕事をしているが、目指すべき地球環境よりも、会社の利益や上司の顔色を伺う事はないとは言えない……ディガーを決して笑えない、と気づいてしまえば笑い凍り付く、と言うものだ。
 これは、決して愉快な映画ではないけれど、この映画から「このままではいけない」と思える感性を、持ち続けていたいと思う。

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