これは、A24が働く女性の抱えるワンオペ育児問題に切り込み、世界各地の映画祭・賞レースを席巻したヒューマンサスペンス。
主演はローズ・バーン。監督・脚本は、本作が長編2作目となるメアリー・ブロンスタイン。
セラピストのリンダは、原因不明の摂取障害を抱える娘の世話と通院に追われていた。海軍士官の夫は、任務で海上にあって頼れず、仕事・家事・育児の全てをリンダひとりでこなさねばならない――そんな中、自宅アパートの天井が突然崩落する。リンダは娘を連れ、海辺のモーテルを仮住まいとして暮らし始める。
だが、アパートの修理は進まず、娘の症状は好転せす、仕事先でも問題が起きて、リンダは更に追い詰められて行く……
男性の育児休暇が漸く稀有なものではなくなった日本とは違い、男性の育児参加が進んでいる筈のアメリカで、何故ワンオペ育児問題?と思ったのだが、この映画、その為に、主人公・リンダをかなり特殊な事情に置いている――娘の難病、軍務で家に戻れない夫、それに住まいの天井崩落……仕事の方も内容的にひとりで切り盛りせねばならず、それに加え、責任感の強いリンダの性格が、それら全てを“自分で解決すべき問題”として抱え込ませてしまうのだ。
娘の摂食障害の原因は判らず、親の責任ばかりを問う病院に不信感を募らせ、娘の介護で夜も熟睡出来ない上に、我儘にも振り回され、アパートの管理者は、あれこれ言い訳をして天井修理の着工さえしない……職場の同僚からは「君に必要なのは睡眠と休息だ」と言われているのに、ストレスがリンダを酒とドラッグに逃避させ、やがて崩壊に至る……そんな、子供と仕事を抱える女性の厳しさを、ローズ・バーンが正に鬼気迫る演技で見せるのだ。
ただ、自分は、この映画が描くリンダの状況に納得が行かなかった――リンダの夫は海軍士官であり、海上任務となれば、それなりの手当ても貰っている筈で、娘の摂食障害は、峠を越えて栄養補給のチューブを外せるかどうか、と言う大事な時期……であれば、リンダは休職して、娘の看病に専念すればよいのではないか、と。
確かに、何故、妻が家事や育児を全て背負い込まねばならないのか、と言う問題はある、だが、リンダは、家に長期戻れない事もある軍人の妻なのだ。育児・家事を担当して家庭を支える役割を担うのは社会的にも当然となるのではないだろうか?……自分が男性だからそう思うのかも知れないが、リンダは、ケン・ローチの映画が描くような、他にどうしようもない程追い込まれているのではなく、自分で自分を追い込んでいるように見えてしまったのだ。
そうした疑問もあって、ローズ・バーンの熱演も、ちょっと空回りしているように感じられてしまった。
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