これは、フランスの弁護士で、TVやラジオの人気コメンテーターとしても知られるロラン・ペレーズの自伝的小説を「人生、ブラボー!」のケン・スコット監督が映画化したもの。
1963年、パリ。6人兄弟の末っ子として誕生したロランは、生まれつきの内反足だと診断され、医師からは松葉杖なしには歩くことは出来ないと言われるが、母エステルだけは決して希望を捨てなかった。
エステルは、治療法を探して欧州中を駆け回り、やがて、矯正器具による治療に辿り着く。1年以上に及ぶ矯正治療の中、ロランの支えになったのはシルヴィ・バルタンの歌だった……
これは強烈な映画で、これが実話と言うのがまず信じ難いものがある。
ロランは。矯正器具により内反足を矯正(尚、この治療法は現在では認められているが、当時は未認可だった)、歩けるようになると、母は、普通の子供に追いつけ・追い越せとバレエを習わせる。それも一流を目指すので、ロランはバレエを踊れる子役として有名になってしまうのだが、そうなると、母は「芸能の仕事は不安定」と法学を学ばせ、ロランを弁護士にしてしまうのだ。
その後も、ロランが恋する女性がいれば、既婚者である彼女を離婚させてまでロランに嫁がせ、弁護士の仕事にまで口を出す……と、母親が子供を気にかけ、世話するのは当然ではあるにしても、さすがに、ここまで行くと、殆どブラックジョーク……「愛情」と「献身」も、ここまで行くと「毒」になっているように思える。
映画は、そんな母親に振り回される、ロランの波乱万丈の人生を描き、その中には、この母親を以てしてもどうにも出来ない悲劇も描かれる。更に映画は、「アイドル」と言う存在を知らしめたカリスマ的ポップシンガー、シルヴィ・バルタンの音楽で彩られ、終盤にはシルヴィ・バルタン(現81歳!)が本人役で登場までするのだ。
そんな内容盛沢山な上に物語自体が奇想天外と来ては、これは最早、音楽に乗せてテンポよく見せるしかなく、本作を、人気コメディ俳優のジョナタン・コエン主演のコメディ仕立てとしたのにも納得……また、母エステルを演じたレイラ・ベクティは、30代の頃から最晩年までをひとりで演じているのだが、年齢相応のリアルな演技には感心させられる。
まるでジェットコースターのような映画だが、最後には静かな感動……これはひとりのひたむきな母親の物語であり、母親が切り開いた人生に感謝する男の子の物語なのだ。
そして、その「感謝」は大抵、手遅れになるのだ、と言う部分を含め、これは普遍的な「母と息子」も物語であったのだ、と納得をした。
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