〜「ヤンヤン 夏の想い出」「牯嶺街少年殺人事件」などで知られる台湾の名匠エドワード・ヤンが1983年に手がけた長編監督デビュー作。13年ぶりに再会した2人の女性の会話を起点に、封じ込められていた記憶と人生の層が浮かび上がっていく様子を描き、台湾ニューシネマ最初期の重要作として高く評価された〜
〜佳莉(ジャーリィ)は小さな町の医師の娘として生まれ、親への服従を重んじる伝統的な価値観のもとで育つ。父の権威に逆らえず愛を失った兄・佳森(ジャーセン)の姿は、彼女に深い衝撃を与えた。やがて佳莉は父が望む結婚を拒み、同級生との結婚を選んで家を出る。一方、佳森の元恋人・蔚青(ウェイチン)は、留学先のオーストリアから帰国しピアニストとして活躍していた。蔚青は佳莉の自由な決断に憧れを抱いていたが、佳莉の結婚生活はいつしか理想とかけ離れたものになってしまう。ある日、警察に呼び出されて海辺を訪れた佳莉は、夫との歳月や自分が選んできた人生、そして見ないふりをしてきた感情と向き合いはじめる。過去をたどるなかで、彼女の中に封じ込められていた時間が少しずつ姿を現していく〜
〜主人公・佳莉役にシルビア・チャン。ウォン・カーウァイ監督作品などで知られる世界的撮影監督クリストファー・ドイルの長編デビュー作でもある。2026年7月、4Kレストア版にて日本初の一般劇場公開〜<映画.comさんより>
エドワード・ヤンの長編監督デビュー作。
英語タイトルは『That Day, on the Beach』
あまりにも貴重で、尊い経験になりそうなので、始まる前からドキドキ。
167分、正直、ちょっとだけ長かった気も。でも後半に入ると、スピードが加速した気がしました。
冒頭は海辺。重い雲に覆われた薄暗い海辺に人が集まっている。一体何があったのか?
佳莉(ジャーリィ)の兄・佳森(ジャーセン)には恋人・蔚青(ウェイチン)がいて、蔚青は佳莉とも仲良しだった。
だが兄は医師である父親が決めた相手と結婚させられる。
ショックを受ける佳莉。蔚青は海外へ飛び立つ。
そして佳莉に恋人ができた時、父親は再び娘を自分が決めた相手と結婚させようとする。
佳莉は父親に逆らい、同級生の徳偉(ドゥウェイ)との結婚を選び家を出る。
これがメインのストーリーだが、物語は蔚青が才能あるピアニストになって、留学先のオーストリアから13年ぶりに台湾に帰ってくるところから始まる。
蔚青が帰国してコンサートを開くという情報をラジオで聞いた佳莉は、ある伝手を使い、蔚青に連絡をとり、2人は再会。
そこから佳莉のこれまでが語られる。
まず兄の結婚話シーン。父の言葉に絶望的表情の兄。
部屋の外に鳥籠が見えていて、そこには2羽の鳥がいる。これはもちろん兄妹ということ。
また母親と佳莉がその間、おそらく散歩に行っていたと思われるのだが、戻ってくると、兄と父親の間には、割れた食器。
ここまでで、すでに、私は、虜。
佳莉と兵役帰りの徳偉は、駆け落ち同然で結婚。
ある時点までは上手くいっていたと思われたが、ほころびが出始める。
徳偉は大手不動産開発企業に勤務しているのだが、競争社会の荒波に吞み込まれていく。
普段より早く帰ってくるという日、佳莉はお手伝いさんと夕食準備に大わらわ。
だが予定が変わり、徳偉はその連絡をしようとするのだが、自宅電話の受話器をお手伝いさんが戻しておらず、何度電話しても話し中となっていた。
遅く帰ってきた徳偉。たまたまの誤解だったのに、疲れもあってか、互いに何も話そうとしない夫婦。
佳莉「この社会ってわざと夫婦を引き離すみたい。男性には男性の活動の場があり、女性には別の場所がある。一緒にいたいと思っても日曜日しかない」
ある時、佳莉は、町中の電話ボックスで、徳偉が若い女性といちゃいちゃしているのを目撃。
佳莉は徳偉の仕事の出先に車で出向く。
徳偉は同僚たちの手前、恥ずかしくてしょうがない。
佳莉はなんとか徳偉と関係の修復をはかろうとしていたように見えたが〜。
その時だったか、別の日だったか、覚えていないんだけど、徳偉が帰宅して、疲れた体をソファに横たえたら、隣にあった観葉植物が枯れ果てていた。
それと対比してか、佳莉は’生け花’を習い始める。
そこの先生が、日本人だか、台湾人だけど日本語が話せたのか、定かではないが、日本語も話していた。
佳莉の結婚生活は、次第に理想とかけ離れたものになっていく。
佳莉の父親が入院。
佳莉の大学時代の女友達のエピソードも入ってくる。
彼女もいろいろあった。
後半は、一気にサスペンスドラマ風。
ある日、佳莉は警察に呼び出され、海辺へ向かうことになる。
海に向かって行き、見えなくなった男。海辺には薬の瓶。
この後、父親が亡くなったんだったかな?
佳莉がやってきた母親にお茶を出す。そこから別の色合いの回想シーンが始まる。
幼い佳莉と兄が父親から強制的にクラシック音楽を聴かされている。
その後、佳莉はひとりで院内を歩き回っている。
診察室で目にしたのは、看護婦に手を出している父親!
次のシーンでは、母親が看護婦にお金と思われるものを手渡している。
佳莉は、その光景をずっと覚えていたんだろうか。
男は女子供を自分に従わせつつ、自分は平気で、無秩序に、自分の欲求を満たしている。
エドワード・ヤン監督の家父長制に対しての抗い!?
佳莉は、生け花の最中、倒れて入院。やっぱり’生け花’、意味があったのよ〜。
徳偉はバラのブーケを手に病室にやって来る。お見舞いに薔薇?これも、意味ありげ。
※予告編
https://youtu.be/HAdG3Kn6FJM?si=q7PZrp1fu_fA_tQ2
今作の最大の見どころを暴露

未見の方はご注意を
今作、回想で物語が進んでいくんですが、回想シーンの中で回想、そのまた回想の中で回想みたいに、回想の層が3つ(もしかして4つ?)確か、あったんです。
それが、こちらをグイッ〜〜〜と、作品の奥深くに連れて行くんです。
この時代にこのセンス!しかもデビュー作ですよ。凄くないですか?
また、佳莉の髪型が、これでもか〜というほど、大胆に変わっていくのも特徴的。
その時々の心情が、髪型で語られていた。
兄の最期の手の動きが、頭にこびりついている。あの意味は...後悔、それとも?
徳偉は死んでしまったのか、それとも日本にいるのか?
ラストシーン、蔚青は、真っ白のジャケットの佳莉が去っていくのを見送る。
総評:満喫。いやあ、凄かった。話自体は難しくないです。
ただ深く読み解こうとすればするほど、頭の中の回想パズルが整列と乱雑を繰り返す。
もう1回観てから書こうかとは思ったんですが、結局、回想の組み立てや、詳細の確認で終わってしまいそうなので、とりあえず記憶がまだ新鮮なうちに書きました。
長尺ということもあり、万人向けではないかもですが、わかる人には価値がわかる作品。
貴重なスクリーン上映をどうか見逃さないで下さいませ。4.3☆
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