これは、万物に精霊が宿る世界を描いたゾー・シャオリンとウェイ・イン原作のマンガ「傘少女夢談」を長編アニメ化したもの。
2024年9月に中華映画特集上映「電影祭2024」にて1週間限定上映され、この度、吹き替え版と併せて拡大公開された。
遥か昔、強い霊力を持つひとつの黒水晶から作られたふたつの宝物“青唐傘”と“黒玉剣”――長い戦乱の後に王国は滅亡し、青唐傘と黒玉剣は、宮殿の秘宝閣に預けられる。
ところが、黒玉剣に宿る精霊ワングイは、大将軍の仇を討つ事を願い、何者かの手引きで秘宝閣から消える――その剣が抜かれる時、再び戦乱が訪れると言う黒玉剣を取り戻す為、青唐傘の精霊チンダイは。秘宝閣の若き宝物修復職人モーヤンと共にワングイを連れ戻すため旅に出るのだが……
本作は、中国の宝物(美術工芸品)に精霊が宿る、とした物語……万物には、それを憑代とする神々や精霊が存在する、と言うのは、正に八百万の神々と言う日本の神道に通じるものがあるし、精霊らが何れも少女として描かれるのには、近年様々な作品が送り出されている“擬人化”ジャンルにも該当する、と言う事で、本作の世界観は馴染みやすいと言うか、既視感があるもの。
尚、登場する宝物は、青唐傘と黒玉剣は創作ではあるが、それ以外の品々は実在の品(エンドロールで写真や、その修復作業が映される)であり、古典詞を元にした挿入歌の歌詞と共に、字幕でその名前が出る、と言う中国文化普及の為の学習効果を狙っているようだ。
アニメーションは、中国で主流の3D−CGではなく、日本流とも言えるセル画風2Dで、とても美しく出来ており、作画や背景、映像効果など、文句のつけようがない。日本の少女漫画的キャラクターのせいもあって、新海誠のコミックス・ウェーブ製作、と言われても納得してしまうような出来だ。
しかし、その一方で、映画としては、かなり難あり、だと思う。
物語の骨子は、中国固有ではなく、むしろありふれたもの……また、古い鏡が魔力を帯びて、とか、命と引き換えに想い人を救って感動のフィナーレとする、とか設定や展開も陳腐だ。
人気のマンガを原作にしたせいでもあるのだろうが、物語には省略が過度でダイジェスト感が強く、観ていてフラストレーションを度々感じる事となった。
精霊ら(特にチンダイ)と修復職人モーヤンとの関係性もしっかり描いて欲しかった所で、モーヤンの技術とチンダイの霊力が今も残る宝物の維持・修復に繋がっている、とすれば、エンドロールにも繋がり、より感動を深めるようにも思うのだが……
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