mixiユーザー(id:124952)

2026年05月04日23:26

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「ブゴニア」感想

 これは、「ミッドサマー」のアリ・アスターと「パラサイト 半地下の家族」の製作陣がプロデューサーを務め、ヨルゴス・ランティモスが韓国映画「地球を守れ!」をリメイクしたサスペンス。
 主演はエマ・ストーンで、ヨルゴス・ランティモス監督とのコンビは、これが5本目になる。
 フォト

 世界から注目されるカリスマ経営者のミシェルが、突如誘拐される。誘拐犯は、ミシェルが代表の製薬会社で働くテディと、その従弟のドンだった。
 テディは、ミシェルが地球を侵略するアンドロメダ星人だと言う陰謀論を信じており、地球を救う為にミシェルを人質に、アンドトメダ皇帝に地球からの撤退を迫るのだ、と言う。馬鹿げた話と一蹴するミシェルと、頑ななテディとの会話は嚙み合わず、テディはミシェルを拷問にかけて交渉を求める。
 やがて、テディが陰謀論に傾倒するに至る因縁が明らかになるが……

 ブゴニア、とは聞きなれない言葉だが「牛の死骸からミツバチが自然発生する」と言う迷信を示す言葉だと言う。

 この映画、リメイクと言う事もあるが、その設定には既視感がある――世間から注目される女性経営者が、陰謀論者に誘拐される、と言うのは予告編でも明かしてしまっているし、異常者や狂信者が、観客が感情移入可能な主人公を誘拐して、肉体的・精神的に苦しめる、と言うのは、オリジナルが参考にしたと言う「ミザリー」を始めとして、誘拐事件を描くクライムサスペンスとしてはよくある設定だろう。また、「多様性」を口癖のように多用するミシェルは、当然、民主党支持だろうし、陰謀論者のテディは、Qアノンを信じる者のように共和党と言うかトランプ支持者だろう。そうした、いささかステレオタイプな人物描写も安易に見える――いくらリメイクとは言え、ヨルゴス・ランティモスにしては、凡庸な設定、そして描写だな、と思ってしまった。

 物語が進展する中、テディが陰謀論に傾倒するに至った理由も少しずつ明かされ、それを利用したミシェルの(かなりエグい)逆襲も描かれるが、それも主題ではない。
 ネタバレにはなってしまうが、映画は終盤に至って、空虚な妄想としか思えなかったテディの“陰謀論”が、実は細部まで真実だった、と明かすのだ――真実は、時に、質の悪い冗談、としか思えないものであったりする。テディがどうして、その“真実”に辿りついたのかを物語は問わず、ミシェルに対してのテディの行いから、人類の本質を見た、と判断したアンドロメダ星人は人類を滅ぼす事を決意する――

 このブラックジョークそのものの内容、2年前なら笑えたのだろうが、今や全く笑えない状況になっているのは、この映画にとっては不幸な事だったのではないだろうか?――第二期トランプ政権発足後、我々は、正に“質の悪い冗談”が現実となるのを見ている。アメリカの大統領が、様々な破壊的な施策を実行に移し、挙句に「(この国には)独裁者が必要だ」と言い、王を自称する、と言うのだから……
 アンドロメダ星人が、人類に下した判決は、奇妙に美しい終焉を迎える。それは確かにヨルゴス・ランティモスらしいもの、と言えるだろう……そして、ふと思ってしまうのは、現実はもっと醜悪な結末となるだろうし、しかも、“質の悪い冗談”のような現実が進行中の現在、それは決してあり得ない事ではない、と言う暗澹たる予感が、この映画を楽しめなくしているように感じた。
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