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2026年04月26日08:00

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「金子文子 何が私をこうさせたか」感想

 これは、1926年に大逆罪で朝鮮人活動家・朴烈と共に死刑判決を受けたアナーキスト・金子文子の自死までの日々を残された短歌と共に描いたドラマ。
 主演は“インディーズ映画の女王”菜葉菜。監督は、日本で最も多くの映画作品を手掛けた浜野佐知。
 
 金子文子は、朝鮮で無籍者として苛酷な状況の中で成長し、帰国後、朝鮮独立の活動家・朴烈と共に反政府運動を始める。
 関東大震災の後、皇太子暗殺を企てたとして朴烈と共に大逆罪で死刑判決を受けた文子は、万歳三唱する。
 その後、恩赦されるも激怒して減刑状を破り捨てた文子は、栃木の女子刑務所に送られ、そこで日本国と皇室に恭順の意を示すよう、転向を強要されるが……

 金子文子については、韓国映画「金子文子と朴烈」が公開されているが、浜野佐知監督は、この映画における、朴烈のパートナーとして思想的にも朴烈の影響下にあった、と言う文子の描き方が納得出来ずにいたそうだ。本作は、そんな浜野監督が、金子文子を、残された数少ない文章や短歌などから、あらためて、その人に迫り描き直そうとするものとなる。
 本作は、インディーズ映画であり、予算が限られている事もあって、描写の大半は、文子が死刑判決を受けて以降の拘置所と刑務所内の描写に終始する――だが、その限られた状況の中でも、決して安っぽさも手抜きもなしに、真実に迫る歴史劇として成立させているのは見事だし、動きがないからこそ、文子の内面を掘り下げていく内容にも見応えがある。

 金子文子を演じるのは菜葉菜。知的で獰猛、飼い馴らせない野獣のような文子を見事に演じてはいるが、如何に年齢不詳の菜葉菜とは言え、既に芸歴だけで四半世紀にもなる彼女が23歳の文子を演じるのはいささか無理を感じる。だが、他に適役も思いつかないのが現実だったり……
 (唯一、ありかも、と思ったのはのんなのだが、彼女とて既に30過ぎ)

 映画の中で、文子が抗うのは、当時の日本の、天皇を頂点に置き国民をその家族とした家父長制による男性主権の支配体制(現・高市政権では未だにこれを目指しているようだが)――勿論、戸籍すら持たず、そうした家族による縛りを受けない文子が、それに従う理由もなく、天皇の権威なくしては体制を維持出来ない、情けない男どもを嘲笑する……だが、その根底にあるのは、自由な精神と、それを不当に貶める納得の出来ない支配に対する、本来なら“当たり前”の抵抗だ。
 だからこそ、家族や社会から無用な圧迫を受けている女性たちの、そして、根本的には人間の自由な精神の発露の為、抗うべし、と訴えかける物語には普遍的力強さがある。

 映画の中で、文子は若い女囚に万年筆を託す――これは、どうやら映画の創作であるようだ……だが、抗う事、そして口を開き、語り続ける事の大事さを訴える心打つ描写であり、ここに監督の想いが込められているように感じた。 
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