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2026年03月25日13:11

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「プロジェクト・ヘイル・メアリー」感想

 これは、「オデッセイ」で知られるアンディ・ウィアーによる同題SF小説を、「レゴ ムービー」のフィル・ロード&クリストファー・ミラー監督で映画化したもの。脚色は「オデッセイ」のドリュー・ゴダート。
 主演は、本作の映画化を熱望し、自ら出資して製作をも務めたライアン・ゴズリング。共演は、「落下の解剖学」のサンドラ・ヒュラー。
フォト


 ライランド・グレースは、見知らぬ場所で目覚めた。周囲の状況から、宇宙船の中らしい事が判る。他のクルーは、コールド・スリープ中のトラブルで死亡し、グレースはひとりきりだった。やがて、グレースは少しずつそれまでの事を思い出し始める――
 近未来、太陽エネルギーが低下する事態となり、調査の結果、太陽のエネルギーが赤外線の帯“ペトロヴァ・ライン”を通じて金星に流れ込んでいる事が判明……このままでは地球は寒冷化してしまう。元宇宙生物学者で、中学教師のグレースは、危機対策チームに召集され、ペトロヴァ・ラインを構成する粒子が生物である事を突き止める。観測の結果、この現象は太陽を含む周囲の恒星に及んでいる事が確認され、更に、11.9光年先に唯一無事な星を発見。人類に残された策は、宇宙船でその星に向かい、太陽を救う為のヒントを掴む事だった、その「ヘイル・メアリー計画」に、何故自分が、と訝るグレースの前に、謎の宇宙船が現れて……

 「ヘイル・メアリー」とは“アヴェ・マリア”と唱えられる事もある祈りの言葉で、アメリカンフットボールの用語では「絶体絶命の状況で投げるラストパス」を意味する、と言う……要するに、「神頼みの最後の一手」と言う事だろう。

 そんなタイトルで、内容の方も、人類滅亡の危機に際し、その存亡を賭けて送り出された宇宙船にただひとり、と言う絶望的な状況で始まるのに、本作は、思っていたよりもコミカルな味付けになっている。特に、前半部はかなりコメディ要素が強く、深刻な状況にあるのを日本人らしく忖度して笑いはかなり控えめだったが、本国では幾度か爆笑になるのではないだろうか?
 その一方で、SFとしてはなかなか見応えのあるものとなっている。恒星の光エネルギーを吸収、惑星でCO2を使って増殖する生命体を登場させ、これによる太陽のエネルギ−低下にどう立ち向かうのか、がメインストーリー。そして、その恒星系で、同じ狙いの別の星の異星人と出会う“ファースト・コンタクト”ものとなり、中盤以降、異星人との交流を描いて、クライマックスでの熱き友情を見せるに至るのだ。これは、胸が思わず熱くなる。
 また、グレースが“ロッキー”と名付けた異星人は、水素と酸素……つまり「水」を必要としない鉱物生命体なのだが、これは正にグレースが、その可能性を研究した結果、学会から追放されたテーマに重なるもので、それを知ったグレースは驚き、喜んでもよさそうなものだが……

 あと、科学考証面で気になったのは、11.9光年離れた星系に最高速度が亜光速の宇宙船で航行して、約12年で到着してるのだが、これはさすがにおかしい。ヘイル・メアリーは1Gで長時間の加減速を行うので、平均速度は光速よりかなり低いものになるハズだからだ。
 他にも、「あれ?」と思う所は散見されたが、SF的に要点を巧く押さえている為にあまり気にならなかった。

 また、本作は構成が巧み……コールドスリープによる記憶障害から、古い記憶から順に思い出して行く、と言う設定で、目的地での恒星系でのミッションに平行して、出発までが描かれるのだ。
 だから、最後に判るグレースの出発の経緯があって、彼がロッキーの為に、「帰らない」と言う選択をするに、感動しつつも納得出来る、と……

 本作は、宇宙もの映画だが、「スター・ウォーズ」のような活劇的な要素は希薄(だから、「退屈」とする評もある)……類似する作品としては「2001年宇宙の旅」が挙げられるだろう。
 しかし、SFならではの“センス・オブ・ワンダー”を感じさせるビジュアルとストーリー、そして、異星人との確かな友情で感動させる、見事な1本。これは、面白かった。
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