これは、パク・チャヌク監督による、時代遅れの男に降りかかった“突然の解雇”という現実を独自の視点で描き出したシニカル・サスペンス。イ・ビョンホン、ソン・イェジン、イ・ソンミン、チャ・スンウォンが出演。
尚、本作は、今年度のアカデミー賞国際長編映画賞韓国代表に選出されている。
製紙会社で25年間、紙一筋に仕事をして来たマンスは、妻ミリと2人の子供、2匹の犬と郊外の大きな家で理想的な生活を送っていた。ところが、電子化の波により、製紙業界は事業の縮小を余儀なくされ、マンスもリストラされ、解雇されてしまう。
マンスは55歳、子供たちはまだ小さく、リタイヤ出来る状況ではないが、今更製紙以外の仕事に就くのは抵抗がある。好調の製紙会社への就活も思わしくない状況で、追い込まれたマンスは、衝撃的なアイデアを閃く。それは、「ライバルがいなくなれば、仕事は手に入る」というものだった……。
この映画、描かれている内容は、専門性の高い仕事をしている勤め人にとって、全く他人事ではないものだろう。自分の勤める業界も「百年に一度の大変革」に直面しているし、AIが人間の仕事を奪い、そして変えてしまっている事を日々痛感する……マンスが直面する危機は身近に存在するものなのだ。
そして、マンスが55歳、と言う、この年齢設定が上手い――40代ならやり直せるし、60代なら諦めがつく。だが、50代はそうはいかない……これもまた、世代的に実感する所だ。
結果、追い詰められたマンスは決断してしまう……本来なら、尊敬出来たであろう、または信頼出来たであろう優れた同業者を、殺す、と言う決断を。そこまでして掴んだ職と地位が、合理化により、これまた変貌していた……と言う皮肉がキツ過ぎるラストまで、この映画はサラリーマンと言うか、働く人全てに対し、時代に取り残されるとは、こう言う事、と言う見事な哀歌となっているのだ。
然しながら、この映画、その哀歌をちゃんと歌えているか、と言うと、そうとも言えないのが惜しい。
確かに、パク・チャヌク監督は、様々な手練手管を使いこなす名手であるのだが、本作については、そうした部分が物語を迷走させ、詰め込まれた多くのエピソードが輻輳する事で、物語を混沌としたものにしてしまっているように思う。この物語と、妙にもたつくテンポの悪さが、本作を判り易く楽しめるものとしていないように思う――同時に、それがパク・チャヌク監督作品らしさ、であるかも知れないが、自分としては残念に感じた部分だ。
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