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2026年03月17日05:53

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「ブルームーン」感想

 これは、リチャード・リンクレイターが、本作のタイトルにもなっている名曲・「ブルームーン」の作詞家、ロレンツ・ハートの晩年の一夜の出来事を描くもの。
 出演は、リンクレイターとのコンビで知られるイーサン・ホーク、「サブスタンス」のマーガレット・クアリー。

 1943年3月31日。ロレンツ・ハートと長年組んで来た作曲家、リチャード・ロジャースが新体制で初めて手掛けたミュージカル「オクラホマ!」が初演を迎えた。
 ハートは最後まで劇を観る事に堪えられず、打ち上げ会場のブロードウェイのレストラン・サーディーズに先に行き、馴染のバーテンダーに愚痴をこぼしながら、打ち上げパーティーに来るはずの、ハートが思いを寄せる女子大生のエリザベスを心待ちにしていた。
 袂を分かったかつての相棒が成功、年若い想い人と、同時に感じる己の老い……愛と嫉妬、そして絶望が交錯する自身の感情と向き合うハートは……

 この映画、冒頭の雨のNYの路地裏、舞台「オクラオマ!」を上映する劇場を除き、殆ど全てサーディーズの店内だけ、と言うワンシチュエイションの会話劇。
 観客は、あたかもロレンツ・ハートに付き合うかのように、サーディーズでの一夜を“体験”する事になる。
 印象的なのは音楽で、サーディーズのバーに置かれたピアノを弾く若い兵士が演奏するものに限られる……このピアノ1本、歌もオーケストラもない、と言う本作の音楽は、この、一期一会の物語に相応しいものに思えた。
 とにかく、この映画、全てがこの調子。場所も変えない、時間軸もそのまま、シンプルな構成でいて、ロレンツ・ハートの語る内容はとんでもなく豊穣だ。
 往年の映画の名台詞、スタンダードナンバーの歌詞が、次々に引用され、そこにロレンツ・ハートのユーモアと毒がまぶされる……残念と言うか、口惜しかったのは、引用される殆どの事に対し、知識がついて行かなかった事……この映画、楽しめるのは、かなり限られるのではないか、と思う。

 また、この映画、かなり凝った撮影をしている。なにせ、ハートは小男だったのに、イーサン・ホークは身長180cm。これを様々な技法で小さく見せているのは、目立たないながらも大変な事だと思った。

 物語としては、成功した袂を分かった相棒に復縁を迫る事と、憧れの女性への告白(ただし、ハートは同性愛者である事に留意)……がいずれも望むような結果とならなかった事を描いて行く。そして、このことと、この翌月の母の死が、冒頭の展開に繋がるのだが、それは本題ではないだろう。
 これは、人並外れた才能を持つ、小さな男の一夜の“夢”を形にしたものであり、(恐らくは現実には行動出来ていない)その人生を変えようとする一夜に臨む高揚と裏返しの不安、それは多くの人が共感出来るのではないだろうか?
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