これは、「君の名は」や、「この世界の片隅に」等のアニメ映画に参加してきた日本画家の四宮義俊が、長年温めて来た物語を自ら監督してアニメ映画としたもの。出演は、古川琴音、萩原利久、入野自由。
尚、本作は、フランスの気鋭スタジオMiyu Productionsとの共同製作となる。
海と森の狭間にある網代湾のほとりにある花火工場・帯刀煙火店は、町の再開発により立ち退きを迫られている。
自宅撤去の強制代執行を前に、立てこもっている帯刀敬太郎の説得の為、敬太郎の兄・千太郎に強引に連れて来られた幼馴染のカオルだが、再会した敬太郎にその事を切り出せず、失われた花火<シュハリ>を打ち上げると言う敬太郎の計画に手を貸す事になって……
このアニメ、特徴的なのはやはり、そのビジュアル……繊細な線と、全体的に淡いグリーンのベールがかかったような色彩と、細部まで緻密に書き込まれた美術と自然描写……なるほど、本作は、日本画家でもある四宮義俊監督のこだわりと美学が詰め込まれたアート作品であり、その作家性は確かに見るべきものはある。
また、優れたアニメ作品と言うのは、ひとつ間違えると絵空事になり兼ねない、その作品世界を如何に設計出来るかにある、と思うのだが、本作はそこもまた見事に出来上がっている。
その一方で、映画としては判り難い部分も多い……時間軸も結構動かすし、説明的な台詞もなく、ぼそぼそとした口調で交わされる会話は聴き取り難かったりもし、物語が把握しづらいのだ。
映画で語られた幾つかのエピソードが投げっぱなしになっていたり、<シュハリ>の意味や、そこに込められた想いなど、もっと語ってもよかったように思うが――ただ、映画内で語ってしまっているように、この世の中には「なくてもいい仕事」はある。そして、花火を含むアート作品もまた“なくてもいい”もの……でも、それを見た人の心動かす事が出来るなら……役に立たなくても、お金にならなくても「やりたい」のが“表現”と言うものなのだ。
そんな想いで打ち上げた<シュハリ>が見せた奇跡は圧巻で、正に、この為に、この映画がある、と言ってもいいだろう……この“表現”が、この映画の全てなのだ。
映画もまた、花火と同じ、闇に投じた光の芸術……だからこそ、この映画は、映画館で観る価値のあるものと思う。
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