これは、「スタントマン 武替道」で共演したテレンス・ラウとセシリア・チョイがW主演を務めたミステリアスなラブロマンス。監督は「時代革命」のキウィ・チョウ。
本作が香港で公開されたのは2019年だから、大分前の映画になるが、昨年から「トワイライト・ウォーリアーズ」、「スタントマン」、そして「長安のライチ」と、出演作が何れも話題となっているテレンス・ラウ人気を頼んでの公開、と言う事だろうか?
小学校教師のレイ・ジーロックは、ある事件をきっかけに意識するようになった女性、ヤンヤンに恋をする。ふたりは急速に惹かれ合うが、ロックには彼女明かしていない事があった……それは、彼が、統合失調症を患っている事。
やがて、ロックの症状は悪化、ふたりの関係は次第に歪み、遂には、ヤンヤンそのものがロックの幻覚だったことが明らかになる。
その後、ロックは治療のために療養施設でセラピーを受けるが、そこでヤンヤンにそっくりな女性イップ・ラムと出会う。彼女は心理学を専攻する大学院生で、統合失調症の症状の一つである「恋愛妄想」を研究していた――ラムは、研究対象としてロックに興味を持ち、論文執筆への協力を依頼するが……
この映画、予告編からはよくあるすれ違いのメロドラマ、と思えるし、そう思って観始めた観客を序盤から裏切る展開にびっくりするだろう――本作は、確かにラブロマンスではあるものの、そこに統合失調症患者の、と言う視点を盛り込んでいるのだ。統合失調症ならではの、幻覚に幻聴、そして認知の歪みを描いて、映画は時にサイコ・サスペンスの様相を見せるに至る……また、現代の映画らしく、彼女の声を幻聴と理解するために、スマホのボイスレコーダー機能を使い、そこにいる彼女が、彼女の声が幻でしかない、と言う事を描く“失恋”シーンには、胸が締め付けられると共に、その描写にも驚かされた。
映画は更に現実の女性、イップ・ラムを登場させ、現実の恋を描いたかと思うと、ヤンヤンがまた現れて奇妙な三角関係になって行く、と状況を二転三転させて行く……そうして、本作は、現実と幻想を行き来する恋模様を描いて行くのだが、それが、SFでもファンタジーでもなく、現実の統合失調症患者が認知する世界なのだ、と言う事に驚かされ、そして考えさせられる――統合失調症を見世物にするのか、と言う批判もあるだろう。だが、それをこうして描くからこそ、見えて来るものもあるのではないだろうか?
映画は、更にそこから一捻りし、最後にイップ・ラムがする、ある“決断”をクライマックスにする――その先のエンディングには批判もあるだろうが、テレンス・ラウとセシリア・チョイのふたりが、当時結婚直後のハネムーン状態であった事を考えると、こうならざるを得なかった、と言う事だろうか?
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